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「あのラボに…居ていいのかなって…思ったりした。
世話になるばっかりで何の役にも立たないことが…辛かった」
「違うっ」
黙って聞いていようと思ってたけど、その言葉だけは聞き流すことができなかった。
「サトシ、それは違う。俺の方が…
俺がサトシを東京に連れて行ったりしなかったら、そんな思いをさせずに済んだんだ」
「ジュン…？」
「ずっと気になってた。サトシはあの村に帰りたかったんじゃないかって。俺は自分の身勝手な想いでサトシの将来を狂わせたんじゃないかって…ずっと…怖くて聞けなかったんだ」
「ジュン…」
怖くて聞けなかったんだ…
「おいらはね、感謝してる。あの村から連れ出してくれたジュンにさ。知らないことをたくさん知って、やったことない体験もして」
「辛い治療だってジュンやマーくんが傍に居てくれたから平気だった。だってその何倍も楽しいことがあったから。おいら、笑い過ぎたらお腹が痛くなるなんて知らなかったよ」
起き上がってふわりと寄りかかるように俺に身を寄せてサトシは穏やかな声で続ける。
「ジュンが何を怖がってるのかわかんないけど、おいらは今、とっても幸せだよ。
ジュンがいてマーくんとその家族、なかなか会えないけどショウくんやカズもいる」
「それに…あの村から出ることを諦めてた頃のおいらには戻れないし戻りたくないよ。
あそこには…」
途切れた言葉はそのまま消えて、サトシはもう何も言わずに星空を見上げているばかりだった。
あの村での思い出はサトシにとって楽しことより辛いことの方が多いんだと、マサキが言っていた。
幼いころに母を亡くし、その後まもなく父をも亡くしたサトシ。自身の身体の変調も含め、たった十歳の少年はそのすべてを受け入れたんだ。
改めて考えるとこれほど残酷なことってあるだろうか。九歳で看取った母は病死だが、父はサトシの目の前で転落死だ。その原因が自分だと言うことに疑問の余地はない。
俺の視線に気付いたサトシはふわりと穏やかな笑みを浮かべた。
過酷な体験ばかりだというのに、サトシはその澄んだ瞳に温かな光を湛え、柔らかな笑みで傍にいる誰もの心を包み込む。
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dango3104(プロフ) - お返事ありがとうございます(〃ω〃)休止中の心の隙間を素敵なお話を一気読みする事で何とか日々を乗りきっておりますm(_ _)m時にニヨニヨし、時に涙し、家族に不審がられようとも気にせず(￣∀￣)何とか智さん不足を補いつつ生きとります(ノ_＜)新作、楽しみにしてます (2022年4月6日 17時) (
レス) id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
ＡＫＩＲＡ(プロフ) - dango3104さん» dango3104さん、コメントありがとうございます！最近は全然UPできていないのですが、何年も前のお話に新しいコメントを頂けるなんて感無量です！また書き始めているので新作ＵＰできたらぜひ読んでくださいね。 (2022年4月5日 23時) (レス) id: 30a2c7b7ee (このIDを非表示/違反報告)
dango3104(プロフ) - 最愛同様に深い愛ですね・・・涙が止まらないです (2022年3月28日 17時) (レス) @page29 id: 51c921a09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年6月10日 12時
