白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ9)

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７　（Ａ　ｓｉｄｅ）ページ9

サトちゃんは俺より二つ年上で、小さい頃よく遊んでくれたんだ。

サトちゃんの父ちゃんは山に分け入り上等の木材を切り出してくることで有名な木こりで、母ちゃんは神楽舞いの踊り手で物凄く綺麗な人だったよ。サトちゃんは母ちゃん似で小さい時から美人さんだったんだ。

その綺麗で優しい母ちゃんは、サトちゃんが九歳の時に病気で死んじゃったんだ。

その後、しばらく元気のなかったサトちゃんだったけど、また俺と遊んでくれるようになった。
なのにそれから一年半ぐらいたった夏、急にサトちゃんと遊べなくなって…それどころか見かけることもなくなって、誰に聞いても答えてくれなかった。
　
俺はね、きっとサトちゃんは神隠しにあったんだと思った。
あんまり綺麗だから神さまがつれていちゃったんだと思ったんだ。

でも違った。サトちゃんは閉じ込められてたんだ、暗い祠の中にね。
　
見つけた時は嬉しいより悲しい気持ちの方が強かった。
だって、サトちゃんはすごく痩せて小さくなってたんだ。

どうしてこんなひどい事って思って泣いた。
でも、サトちゃんはびっくりするほど細くなったその腕を格子の間から伸ばして
俺を優しく撫でてくれたんだ。

サトちゃんの方が泣きたかっただろうに、俺が泣いちゃったからきっと泣けなかったんだ。
　
俺は鍵を壊してサトちゃんを連れて逃げようとした。
だって閉じ込めたのは村の人たちだって聞いたから。

でもサトちゃんはダメだって言ったんだ。

父ちゃんは自分を逃がそうとしてつり橋から落ちて死んじゃったからって、
俺もそうなったらいやだって、そう言って…