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「わかってるよ。それじゃ、これは貰っていくね」
「サトちゃん、俺たち昼前には出るんだ。見送りはいらないから、ゆっくりしててね」
「…うん」
「また、近々もどってくるからね」
「うん」
サトシは小さく返事をして俺たちを交互に見て、ふわりと綺麗な笑顔を見せた。
「もう少しここに居るから寝てな」
そう言うと掛布を口元まで引き上げてサトシはゆっくり瞼を閉じた。
サトシが眠った後、俺は先に宿へ帰り、荷物をまとめてから戻ると、サトシは起き上がってマサキと話をしていた。
「もう時間？」
「そうなんだ。ごめんね、サトちゃん」
「なんで謝るの。マーくんだって仕事でしょ。
可愛い子どもたちが首を長くして待ってるよ。マサキせんせーまだぁ？ってね」
「そうだね。顔を忘れられないうちに戻らないと」
そう言って笑いあう、その優しい空気感が俺の胸を締め付ける。
なんでこんなに無垢で柔らかな心をもったこの人が…
太陽みたいに笑う温かで心優しいマサキが…
悲しい気持ちを隠して笑うようなことになったんだろう。
俺になにができるか分からないけど、どうにかしてやりたいって強く思った。
「じゃあ、行くね」
名残惜しそうにサトシを抱きしめたマサキが、まるで自分に言い聞かせているかのように強く言う。
「うん。元気でね。また帰ってきてね」
「サトちゃんも元気でね。無理したらダメだからね」
「ふふ、わかった」
マサキから解放されたサトシが俺に向き直る。
「ジュン、いろいろありがと」
そう言って俺にもくれる柔らかな笑顔に目の奥が熱くなる。
本当は不安なんだろう、自分の身体のことを詳しくは知りたくないのかもしれない。
なのに、あなたはそうやって笑って受け入れるんだね。
「何もしてないよ。礼を言うのは俺の方だ。あの神楽舞い、すごかったよ。
俺は科学者だけど、すごく神聖なものに触れた気がするんだ」
「良かった。あの神楽舞いを見に来たって聞いた時、ちゃんと舞わないとがっかりされちゃうかなって思ったから…」
その嬉しそうな顔を見て、思わずその薄くて小さな身体を抱きしめた。
これじゃあ、マサキのことを笑えないな。
「必ず、また来るから」
「うん。待ってる」
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年5月20日 13時
