白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ26)

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翌日の早い時間にマサキがサトシを連れて宿に二人でやってきた。

「ジュン、迎えに来たよーっ」
マサキの大声に眉をひそめた俺を見てサトシが笑う。
「朝っぱらから煩いんだよ」
「マーくんはいつでも元気いっぱいだからね」

「体調はどう？もう苦しくない？」
「うん。もう平気」

昨日よりずっと顔色もよくなってるけど、昨日の今日であの消耗ぶりが回復するとは考えにくいから、何でもなさそうに笑顔で答えるサトシを注意深く観察する。

「もー、ジュンってば、サトちゃんのこと見過ぎ」
「マサキ、茶化すな。俺はね、この人の体調が気になるんだ」

俺が睨むとマサキは首を縮めてサトシの後ろに隠れた。
って言ってもサトシより大きいマサキは丸見えなんだけどな。

「ほんとに大丈夫。もう息も苦しくないし」
サトシはそう言って胸に手を当てた。
「そう。だったらいいんだ」

「ジュンってさ、紳士だよね」
マサキが性懲りもなくふざけたことを言うのを無視して手を伸ばす。

「診療所の鍵。借りて来たんだろうな」
「まっかせなさーい。ちゃんと借りて来たよ」

チャリンと音を立てて俺の鼻先で振るのは年季の入った古い鍵束だった。
設備は期待できそうにないな、そんなことを考えながら鍵を受け取る。

診療所は村の入口すぐのところにあったけど、予想を裏切らない、まるで物置小屋みたいな建物だった。