白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ25)

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「不完全…？神様の子ども…って」
今の世の中、そんなこと言う奴なんてほんとにいるのか…？胡散臭さに鼻白む。

「なんでそんな言葉を両親は信じたんだ。病院には行かなかったのか？」
「おいらね、この村を出られないんだ。村から離れるにつれてどんどん具合が悪くなる…」

「だから、神官さまは神様の子だって…そう言ったんだ。
あのご神体に宿る神様から離れられないんだって」

「そんな訳あるか。偶然だろ…」

「ほんとだよ」

俺の言葉を遮ったのはマサキだった。

「ほんとだなんだ。俺、何度もサトちゃんをここから連れて出たんだけど…
どうしても駄目だったんだ。ひどい眩暈と吐気で動けなくなるんだ。
三回目に…俺が耐えられなくなって、諦めた…」
　
辛そうな顔で唇を噛みしめるマサキの背中をそっと撫でてサトシが首を振る。

「マーくんのせいじゃない。おいらは自分で決めたんだよ、ずっとここにいるって」

ふたりの話を要約すると、サトシはこの村を離れると頭痛や眩暈がして吐気まで起こる。それは村へ引き返せば治まるらしい。サトシが嘘を言ってないことはわかるけど、俄かには信じがたい。

「あのさ、俺はこれでも科学者で医者でもある。
二人を疑うわけじゃないけど、ちょっと信じられないんだ。いろんなことが不自然過ぎるよ」
　
俺は科学者の端くれとして、どうしてもはっきりさせたいことが二つあった。

サトシの何が不完全なのか。
何故、村から離れると体調不良となるのか。
この二つを解明したかった。

「あのさ、マサキに頼みがあるんだけど、何とかなるか？」

俺は診療所の使用許可をマサキに取って来てもらい、サトシの血液検査をしたかった。
レントゲン撮影もしたい。たぶん古い機材しかないだろうけど撮影ぐらい何とかなるだろう。

それに血液検査は採血さえできれば持ち帰ってラボで調べれば事足りる。
とにかく何でもいいからやってみないと進まない。

「診療所の鍵はすぐ貸してくれるよ。怪我したらみんな結構勝手に使ってるからさ」

いい加減で助かる。
明日、サトシを連れて診療所へ行くことにして、ここに泊まると言うマサキを置いて、俺だけが社務所を後に宿へ帰った。