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「サトちゃんはあんまり食べないんだけどね」
そう言いながらもきっちり三人分っていうのが、いかにもマサキらしい。
「なあ、マサキ。この人は子どもの頃から喘息だったのか？」
握り飯を頬張るマサキに聞けば、むぐむぐ言いながら首を振る。
「んーん、…ちが…ぐっふ」
「ガキみたいにがっつくからだろ。ちゃんと食ってからでいいよ」
トントン胸をたたいてなんとか飲み込むと、咳払いしたマサキが答える。
「普段は何ともないんだ。でも神楽舞いの練習しだすと体力使うからか、時々なるみたいなんだ。最近のことは俺も知らないけど、少なくとも俺が知ってる三年前まではそうだったよ。
でも、そうだな…小さい頃はもっと元気だったような気がする。
サトちゃんのあとをついて行くので精一杯だったもん」
「なるほどね、小児喘息って訳じゃないんだ。だったらアレルギーか」
「ジュン、ほんとに医者なの？俺、聞いてないよ」
「ああ、だって俺は医者になるつもりはないからな。
親との約束だったから医師免許まではとったけど、研究する方がずっとおもしろいし。
病院で患者相手にしてるより研究所の方が俺の性に合ってるんだよ」
マサキはふうんと気のない返事をして、二個目の握り飯に手を伸ばす。
「なあ、この人さ、他の人と違うって言ってただろ。何が違うか知ってるか？」
「…それは…サトちゃんに直接聞いてよ。俺…俺から言うのは…」
言いよどむマサキの代わりに、目を覚ましたサトシが掠れた声で妙にはっきりとこう言った。
「おいらね、人として不完全なんだって」
サトシの告白は衝撃的な言葉で始まった。
「神官様が言ったんだ。お前は神様の子どもだからそれでいいんだって。
別に痛い訳でも苦しい訳でもなかったから、おいらは平気だった。
でも、母さんはすごく悲しそうに時々おいらを抱きしめて泣くんだ。
サトシ、ごめんねって…それだけが辛かった」
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作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年5月20日 13時
