白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ23)

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サトシの住んでいるところは社務所の奥にある小さな部屋だった。
子どもの頃からたった一人でここに住んでいるという。

きちんと片付いた殺風景な部屋を見て、俺は無性にアメリカのアパートメントが懐かしくなった。雑然としてたけど、そこここに住んでる人の気配がする部屋だったっけ。
ここは誰も住んでないみたいに生活感がなく、ひんやりしてたんだ。

「ジュン、そこの押し入れから布団出して」
マサキの声にはっとして、あわてて押入れを開けて言われた通りに布団を出した。

「もう、何やってんの。敷布団敷いてからじゃんか」
「え、敷布団ってどれだよ」

「うそでしょ、知らないの？
もー俺がやるから、サトちゃんを頼むよ。寝ちゃってるから、そっとね」
　
呆れ顔のマサキが背中を俺の方に向ける。
余程つかれているんだろう。
マサキの背中から降ろして俺が抱えても起きる気配もないサトシの顔は蛍光灯に照らされて
青白く、息もしてないみたいに見えて思わず抱えた腕に力がこもる。

「ほら、布団敷いたからサトちゃん降ろしてあげて」
そっと布団に降ろして掛布をかけ、ほっと一息つくとマサキが笑った。

「布団敷いたことないんだ、さすが帰国子女」
「うるさいな。ずっとベッドだからだよ。
俺ん家に和室なんかないし、実家にだって布団はないね。」
「まあ、今時それが普通かもね」
マサキはうんうん頷いて納得する。

「ジュン、どうする？宿に帰る？」
マサキは眠るサトシに視線を落としてから俺を見た。

「俺、もうちょっと様子見てるから」
「お前がいるなら俺もここに居るよ。ちょっと気になるしな」
布団の横で胡坐をかいてマサキに向き直る。
「それにもう少し聞きたいこともあるから」
「だったら俺ちょっと出てくる。腹減ったでしょ？何か調達してくるからサトちゃん見ててね」

そう、俺はこれまでの経緯を知りたかった。いろいろ引っ掛かるところもある。
眠るサトシを見ながら思い返すのはあの言葉…

「他の人とは違うから…」
「サトちゃんは大人になれないんだ…」

大人になれない…大きくならないってことか…？
真っ先に浮かぶ下垂体異常…それが一番しっくりくるかもしれない。
検査すればすぐにわかるんだけどな。

そんなことを考えているあいだにマサキは夜食を調達して戻ってきた。