１６ ページ18
「ジュンってば、終わったよ」
「…」
マサキに肩を揺すられ我に返る。気付けば舞台にあの人の姿はない。
「なに呆けてんのさ。サトちゃんに会いに行くよ」
瞬きして頭を振った俺は慌ててマサキの後を追う。
マサキは舞台の裏側にある小さな東屋へと慣れた様子で入っていく。
「サトちゃん、入っていい？」
声をかけると返事も待たず、マサキはずんずん入っていく。
大して広くない東屋だから、マサキの声が聞こえないはずはないのに返事がない。
「サトちゃん？」
遠慮なく目の前の襖をあけて中に入って行くのを止めようと腕を伸ばしたとき、鋭く息を吸いこむマサキに驚いてその視線を辿る。
そこには白装束もそのままに、床に倒れたあの人の姿があった。
「サトちゃんっ」
マサキは弾かれたように駆け寄り抱き起すと血の気の失せた白い顔は苦しげで、浅い呼吸音と忙しなく上下する胸が呼吸困難であることを表していた。
きつく瞼を閉じたまま、ひゅうひゅう咽喉を鳴らし返事の出来ないサトちゃんを揺さぶるマサキに、はっとしてその手を止める。
「マサキっ、俺に任せて下がってろ」
サトちゃんの身体を揺するマサキを押しのけて、白装束の帯を解き紐を緩め、苦しむその華奢な身体をそっと起こして背中を擦る。
大きく波打つ薄い背中は骨ばっていて痛々しいくらいだった。
吸入すればすぐ楽になるけど、そんなものどこにもない。
ただ、ひたすら声をかけ、背中を擦る。
「大丈夫だ、落ち着いて。ゆっくり息をするんだ。すぐに苦しくなくなるよ」
俺に縋り付いて喘ぐサトちゃんが少しずつ落ち着いてきたのを確認して振り返る。
「喘鳴は気管支の発作だから、
寝かせるより身体は起こしてやった方が楽なんだ…って、マサキ…あーごめん」
突き飛ばされたまんまの格好で、今にも泣きそうな情けない顔のマサキを見て、ちょっときつく言い過ぎたことに気付いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ＡＫＩＲＡ
| 作成日時：2017年5月20日 13時
