白妙の衣は薄紫の花に埋もれて…１出会い編 (ページ12)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:43,681 hit

１０ページ12

「サトちゃん、俺だよ。マサキ。そっちに行っていい？」

驚かさないように静かに低く声をかけたマサキは、俺といる時とは全然ちがう雰囲気でちょっと意外だった。
マサキは誰に対しても全く態度を変えない奴だと思ってたからな。

でも、視線の先のその人を見た時、妙に納得したんだ、ああそうかってね。
　
白装束を身に纏った華奢なシルエットのその人は黒髪のショートヘアで、巫女さんってみんな髪が長いと思ってたからちょっと驚いた。

少し俯いた横顔はマサキの言う通り本当に綺麗だと思った。
　
マサキに声にピクリと肩を震わせてゆっくりと振り返り、まるで夢から覚めたように瞬きをしたその人は澄んだ鳶色の瞳で声の主を見た。

「マーくん…？」

その人は俺の知る美人とは全く趣の違うタイプだった。

綺麗な弧を描く眉に通った鼻筋、それに小ぶりだが赤い唇が化粧っ気のない素顔を危ういバランスで保っている。
でも…待てよ、ちょっと待て。
マサキより二つ上って言ってなかったか？到底そんな年には見ない。

「サトちゃんっ」
「あ、ダメ、待って。潔斎中で、誰にも触っちゃいけないから」

飛びつかんばかりの勢いで駆け出したマサキから逃げるように身をひるがえして制止するその人の声は透明感のある澄んだ響きの、思ったより少し低めの落ち着いた感じだった。

「マサキ、この人が？」
「ああ、ごめん。そう、この人がサトちゃんだよ」
嬉しそうに俺にその人を紹介するマサキ。

「で、こっちがジュン」
　
マサキの肩ほどしかないサトちゃんは軽く会釈すると少し首を傾げるように俺を見て小さく笑みを浮かべる。
その仕草も表情もあどけなさが強く残っていて、俺より年上だなんて信じられなかった。