第十五波 ページ15
…帰りたくない。
バイトの時間が幸せ過ぎるからだろうか。帰り道に頭の中を占めるのはその言葉だ。
バイトだってお小遣いを増やすだけじゃなく、家に帰らない口実を作るための物だった。
図書館は6時で閉まってしまうし、他にいく所など無いのだから。
だから、あの分かれ道までが今の幸せだ。
無言で歩いているだけでも彼女が視界に入るだけで嬉しくて、頬が高揚して、こんな感情、持ったことなかった。
なのに途中で出会った2人の男、その後から来た方の顔を見た途端、有加ちゃんの声のトーンも表情も…元々薔薇のように美しかったのに、更に可愛い笑顔を見せていた。
一目でわかる態度の違い。
ああ。有加ちゃんはこの、浦正君って人が好きなんだ。
鞄を抱きしめ、複雑な感情を抑え込もうとする。
心配そうに覗き込むその姿がまた美しくて、俺を謎の喪失感に叩き落としていた。
そして、何故か男3人は一緒に帰っていた。
「涼真だっけ。お前家こっちの方なの？」
「あ、うん。そう」
何故か3人一緒に帰っている。
それが嫌だとは思えない。むしろ暖かくて、ほっとする空間にいるみたいだ。
1人だと帰りたくなくてとてもゆっくり歩くのだが、早い歩調の2人に合わせると自然に早歩きになる。
家に着くのが早くなってしまう。
帰りたくない！
「体調悪いのか？」
くいっと大きい目の方が顔を覗き込む。
おでこに手を当て、熱は無いみたいだな、と胸を撫で下ろしていた。
ふと桃君の言葉を思い出す。
確か…物凄く中野風男子学園について罵倒していた気がする。
でも、初対面なのにこんなにほっとするなんて今までない。
家の近くに同じ学校の人がいた…桃君と出会った時のほっとした感情とは全然違う。
特にこの目の大きい方…彼に対しては嫉妬のような感情と安心感と…いろんなことを思う。
負けてもしょうがないかもしれない。こんなに素敵な人今まで見たことないから。
「…もしかして、帰りたくない？」
目の前でほっとしている人とまた違う声が聞こえる。
顔を上げると明るい髪の右手のビニール袋が不釣り合いなオシャレな人がポケットに左手を突っ込んで言った。
「涼真、帰りたく無いんだろ」
「なんで…」
なんでわかるのか。
そう言おうと思って目を合わせて、喉から声が出なくなった。
目が怖かった。
何かを射抜こうとする鋭い目、何かを見透かそうとする目…
普通じゃない。
身体は浦正君の方が大きいのに。
粋がってるだけのただの不良ではない…
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杜若蒼(プロフ) - まおさん» コメントありがとうございます♪待っててくれるんですか！ありがとうございます！本当に遅くなるかもしれませんが頑張って書きますね♪ (2014年10月5日 21時) (
レス) id: 55b24aa62f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - すみません、始めましてじゃなくて初めまして？でした… (2014年10月5日 21時) (レス) id: 3cad231990 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 始めまして！とっても面白いです！そして温かいお話ですね…。ちなみに私は浦正くん推しです。更新いくら遅くとも待ちます！それくらいこのお話が好きです。応援してます。頑張ってください！ (2014年10月5日 21時) (レス) id: 3cad231990 (このIDを非表示/違反報告)
杜若蒼(プロフ) - TAMIKOさん» 了解でーす♪書き上げ次第更新しますね♪コメントありがとうございます♪ (2014年5月24日 4時) (レス) id: 064ab8f00f (このIDを非表示/違反報告)
TAMIKO(プロフ) - 早くー！続きー！待ってます！ (2014年5月24日 0時) (レス) id: 73739dc8a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杜若蒼 | 作成日時：2014年3月24日 14時
