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第五波(2) ページ39

全員で花束を買って、花瓶も買って、果物も買って、狂平くんの病室へ行った。
狂平くんは本を読んでいた。

「狂平!何をよんでんだ?」
「昔の本。姉ちゃんが持ってきてくれて。仕事が大変みたいで、すぐ帰ったけど」

狂平くんは笑って見せた。絵本で、沢山の妖精の絵が書いてあった。

本当に彼は妖精が好きなんだ。

「いいだろ、この花。俺が選んだんだぜ!」
「さすがコジくん!オシャレだ!でも、花瓶もいいの?」
「もちろん!」
「果物も買ったで。切ろうか?」
「いいよ。姉ちゃんが来たときに食べるから。ありがとう」

皆が狂平くんの周りに集まる。
しかし、黒縁メガネの少年は入り口の前でじっと立ち尽くしていた。

「メガネ先輩、どうしたんですか?」
「・・・狂くん、あのさ・・・」

桃くんは拳を握りしめた。

崩れ落ちた。

正座をし、深々と頭を下げた。

「ごめんなさい。許してもらえないと思うけどごめんなさい」
「桃くん?どうしたんや?」

周りは唖然としている。
もちろん狂平くんも。
私も、何が起こっているのか、わからなかった。

「何をしたいの?別に武器屋には何も・・・」
「僕じゃない。僕じゃないんだ」
「何が言いたいの?」

狂平くんは持っていた絵本を握りしめた。
桃くんは顔もあげない。

「ちあきの事・・・僕の従兄妹で・・・」
「喜屋武、ちあき・・・」

狂平くんの手が震えた。

彼の右腕が上がり、手にあった絵本が宙を舞った。
その絵本は桃くんの体に当たった。

「あの喜屋武の従兄妹?道理で似てるわけだ!ガン○ム好きなとこも、笑い方、喋り方、顔つきだって似ている。そうか。喜屋武の従兄妹か!」

横に積み重ねられた沢山の本。
次々と宙を舞う。

コジくんと浦正が抑えようとしても、手当たり次第投げていく。
女子が桃くんを庇おうとして、避難させようとしても、桃くんは動かない。

狂平くんの目は涙で溢れていた。

「大嫌いだ。人の気持ちも知らないで。良い会社の社長の娘だかなんだか知らないけど、偉そうで、大嫌いだ!」

果物も投げられていく。
正確とは言えなくても、幾つかは桃くんに当たっていて、私達は見ているしかなくて・・・

果物がなくなると、最後に籠に残ったものをだした。

果物ナイフ

狂平くんは間髪いれずにそれを投げた。

手を伸ばす。
腕に当たる。
跳ね返り、頬をかすめる。

乾いた音が足下でなり、紅い雫が白い床に落ちる。

全員の息を飲む音。

狂平くんの顔は青くて目は赤かった・・・

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K - これはやばい、泣きそうなるwwおっしゃ、続きみてきます!! (2014年7月24日 16時) (レス) id: 62927ed8ab (このIDを非表示/違反報告)
杜若蒼(プロフ) - 馬鹿様@義さん» 嬉しいです!ありがとうございます☆ (2013年7月26日 20時) (レス) id: 064ab8f00f (このIDを非表示/違反報告)
杜若蒼(プロフ) - ちゅりさん» 容量関係で新しい奴作ったよ♪ (2013年7月26日 20時) (レス) id: 064ab8f00f (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿様@義(プロフ) - とてもいい話ですっ!!めっちゃ続き気になるます!! (2013年7月26日 17時) (レス) id: 2449c355ab (このIDを非表示/違反報告)
ちゅり(プロフ) - 続き気になる―やっぱり面白い (2013年7月19日 17時) (レス) id: d15994d5d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杜若蒼 | 作成日時:2013年5月26日 23時

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