風男塾であり幼馴染であり (ページ36)

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第四波　狂平目線ページ36

「狂平！」

浦正はおもいっきり俺の体を抱きしめた。
力の加減が出来てないのか、ものすごい痛みを感じる。
でも、痛みは夢じゃない証。
俺、生きて・・・

「狂平、その骨折は何処でしたの？」

姉ちゃんは上着のポケットに手をいれていた。
いつもと違う表情。
姉ちゃんが少し怖い・・・

まるで職務質問みたいな会話。

姉ちゃんはポケットから、小さな機械を取り出した。

録音機だ。ドラマなどで見かけるやつ。
ランプが消えたから、今の事を録音していたのか。

姉ちゃんが俺の体に抱きついた。
浦正ほど強くない。

顔と顔がすぐ近くにある。
そこで姉ちゃんは俺にしか聞こえない声で囁いた。

ごめんね・・・

姉ちゃんは録音機を持って、病室を出て行った。

Aさんが追いかける。
Aさんは優しいけど、ものすごい鈍感。

分かってしまった。姉ちゃんがしたい事が。

「狂平、お前・・・Aとどんな関係？」
「え？・・・何の事？」

浦正が俺の右手を握る。
右腕は点滴が刺さっていた。
みるとその腕はものすごく細かった。
浦正の鍛え上げた腕とは雲泥の差だ。

「さっき、お前のお姉さんが昔、Aと狂平が仲が良すぎて一緒に山に入った、みたいな話をしてて・・・それで・・・」
「あ・・・」

『Aちゃん！みてみて！』
『キョウヘイくんは絵が上手でいいなぁ～。ねえ、妖精描いてよ』
『いいよ。Aちゃんにあげる！』
『ありがとう！キョウヘイくん大好き！』
『俺もAちゃん大好き！』

まさか・・・あり得ない。
あの女の子がAさん？

もう、会っていたの？

「○○の森でお前、見つかったんだ。見つけて、狂平をふもとまでおぶって、救急車呼んだのAだよ」
「全然覚えてない・・・」

女の子におぶってもらったんだ・・・俺、カッコ悪い・・・

「不思議だった。なんであんな森にお前がいて、Aが見つけられたか。でも、多分分かった。お前、昔Aと知り合いだったんだ。そして、俺がAと初めて話した時、泣き叫んでいた男の名前、お前の事なんだ」

あの女の子と仲が良すぎて一緒に山に入った。あの子に妖精を見せたかったんだ。
見せたのは俺の弱った姿。
今の、だらしないこんな姿なんだ。

「狂平、俺、Aが好き。特別。特別なんだ」

浦正は俺の右手を強く握った。

「仲人になって欲しい。俺の勇気がないだけだけど、Aの事、俺、本当に好きなんだ」

浦正の目は全くふざけてなかった。