風男塾であり幼馴染であり (ページ32)

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第四波（７）ページ32

「まだ、なんですか？」
「体も衰弱していて、手術は厳しいみたい。狂平は目覚めないし」
「そんな・・・」

狂平くんは点滴につながれ、左腕は固定されていた。
昨日から目を覚まさないらしい。

「病名は・・・一体・・・」
「病気ではないわ。まあ、一種の病気だけど」
「は？」

病気では、ない？
どういうこと？

「栄養失調。今まで倒れないのが不思議なくらいだって」
「はい？なんで・・・」

栄養失調？それって、アフリカとかの人がなるものじゃないの？どういうこと？

「もちろん、母が食べ物を与えていない訳がない。一つ考えられるのは・・・」

お姉さんの言葉が止まった。
言いにくいのか。
浦正が一歩近づく。

「聞く覚悟はあります。狂平がどんなに辛くても、支えます。」

だから教えて下さい。

浦正の目は真剣だった。

「・・・本当、狂平の選択は正しかったわ。こんないい友達ができるなんて」

そう言いながら狂平くんの頭を撫でた。
お姉さんは狂平くんの事を、本当に大切にしているんだ。
それだけはわかった。

「聞ける？」

浦正が頷いた。
まりる、愛、コジくん、真紀ちゃん、光くんも頷いた。
部長も桃くんも。
私も頷いた。

でも、怖い。怖いんだ。

「狂平は・・・拒食症の可能性がある・・・」
「拒食症って、ダイエットからくるものじゃないんですか？」

桃くんが言った。
拒食症はダイエットからくるものだと私も聞いた事がある。

「ええ。でも、狂平は多分違う。ストレスからくるものではないかと言われた」

ストレス・・・
浦正が目撃したという父親の暴行の事・・・

「違う。ちあきじゃない。ちあきじゃない。ちあきのせいじゃない・・・」
「桃？大丈夫か？どうした？」

桃くんが突然涙を落とした。
トレードマークのメガネを外している。
後ろを向いた。

「僕、ちょっとでてく」
「メガネ先輩？」

桃くんは走って病室を出て行ってしまった。

「ごめん。桃の所にいく。何かあったら連絡くれ」
「ああ」

曜くんも出て行ってしまった。

何とも言えない雰囲気が病室に残った。

「桃、どうしたんだろ・・・」
「ちあきって誰？」

そう。桃くんが言っていたちあきって誰？
なぜ急にその名前が出て来たの？

「あ、そういえば、名前、聞いてませんでしたよね。俺は赤園虎次郎です」
「私、京本有加。違う、緑川有加。一様狂平の10歳上」

京本。
それが旧姓なんだ。
離婚したばかりなんだ。

離婚したばかりで狂平くんの母親は死んだんだ・・・