第四波(5) ページ30
「狂平くんの・・・お姉さん?」
目の前にとても綺麗な女性が現れた。
肩につくくらいの茶髪セミロングで洋服は黒いスーツ。
仕事中だったのだろうか。学生には見えない。
「ええ。そして、戸籍上今日から狂平の保護者です。これが、戸籍標本です」
「ちょ、ちょっと待ってください。今日から・・・とは、どういうことでしょうか。お姉さんですよね?」
「ええ。今日からです。狂平はまだ17なので保護者が必要でしょ?」
「そうではなく・・・」
「母が昨日亡くなり、父は離婚していませんので」
え・・・
亡くなった?
それも・・・昨日?
・・・何それ。おかしいでしょ・・・
「戸籍上私が保護者です。母の保険がありますし、私も就職していますので入院費は支払えます。狂平の手術をしてください」
目の前の医者は呆然としていた。
私だって驚いている。
他のみんなも。いつもうるさい浦正まで呆然としている。
少なくても嘘をつく人には見えなかった。
「死因は?何で・・・」
浦正の声は震えていた。
皆は唇を噛み締めていた。
「心臓麻痺。元から体が弱かったから。誰もいない所で亡くなったらしいわ。でも、狂平は幸せね。病院へ連絡してくれた人もいて、わざわざ私に知らせてくれた人もいる。本当にありがとう」
言葉が出なかった。
どういえばいいかわからない。
わからなかった。
「お姉さん。彼の体は弱っています。骨折が数日放置され、早く手術をしないと腕は動かなくなります。しかし、今のままでは彼の体は持ちません。また、気になる事がありますが・・・その・・・」
ああ。守秘義務って奴だ。私達には話せない。
そんな規則なくなれば良いのに。
「もう、帰って構わないわよ。何かあったら、電話をかけてくれた男の子に電話をかけるから」
「でも」
「先輩方、戻りましょう。早くしないと狂平先輩の治療が始まりませんし、せっかく部長も来てくれているんですから」
「光くん・・・」
でも確かにその通りで、医者も早く帰れ、と目で言っていた。
「じゃあ、行きましょう。部長はどうしますか?」
「泊まっていいか?結構遠いから。」
部長の横では桃くんが呆然と立っていた。
「桃?大丈夫か?」
「コジくん、心配しないで。光くん、僕もいい?」
じゃあ、私も、と真紀ちゃんが言い、愛、コジくん、まりる、浦正まで光くんの家に泊まると言った。
私も流れで泊まる事になった。
「じゃあ、よろしくお願いします」
浦正が礼儀正しく頭を下げた。
・・・・・・
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K - これはやばい、泣きそうなるwwおっしゃ、続きみてきます!! (2014年7月24日 16時) (レス) id: 62927ed8ab (このIDを非表示/違反報告)
杜若蒼(プロフ) - 馬鹿様@義さん» 嬉しいです!ありがとうございます☆ (2013年7月26日 20時) (レス) id: 064ab8f00f (このIDを非表示/違反報告)
杜若蒼(プロフ) - ちゅりさん» 容量関係で新しい奴作ったよ♪ (2013年7月26日 20時) (レス) id: 064ab8f00f (このIDを非表示/違反報告)
馬鹿様@義(プロフ) - とてもいい話ですっ!!めっちゃ続き気になるます!! (2013年7月26日 17時) (レス) id: 2449c355ab (このIDを非表示/違反報告)
ちゅり(プロフ) - 続き気になる―やっぱり面白い (2013年7月19日 17時) (レス) id: d15994d5d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杜若蒼 | 作成日時:2013年5月26日 23時