絵本2 (ページ5)

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ある日の夜の出来事2 #一次創作　#NL ページ5

「えーっと…しんどいなら作り置きの惣菜だけでもいいよ？食べていいの？」
「あれはお弁当用だからだめ。」
「でも料理なんて…」
　この人が壊滅的な料理音痴なのは知っている。
　だからこそ私しかキッチンに入らないのだ。
　それにしても、この人は私がどうして抱きついているのか、考えないのね。
「具合、悪い？」
「…ほんのちょっと。」
「じゃあコンビニ行くよ。ゆっくり寝てて。何か食べたいものある？」
「そうじゃないの。」
「ん？そう…なに？」
「まだこのまま…」
　このまま動かないで。
　ずっとあなたの体温を感じさせて。
　あなたの早くなっていく心音をこのまま聞かせて。
「からだ、冷えちゃうよ。ベッドいこう？」
「…いじわる。」
　無理矢理引き剥がされ、手を引っ張られて、ベッドまで連れて行かれる。
　寝かされると、そのまま掛け布団をかけられてしまう。
　ムッとしていると、愛しの人は私の耳元でこそっと囁いた。
「ゆっくり寝て。起きたらいっぱい構ってあげる。」
　自分の表情筋が柔らかくなったのに気がつく。
　愛しの人はニコッと笑って、コンビニ行ってくるね、と言って部屋を出て行ってしまう。
　私、やっぱりあの表情に弱い。
　火照った顔なんて見る人もいないのに、私は精一杯指を伸ばして、顔を手で隠した。