Ep.18 つまり過去回想入りますってことでよろしいか？ ページ19
＿＿＿
「何も無かった」ということを覚えているだけで、あの方と出会う以前のことはさほど多く覚えていない。
何もせずに生きてきたのか、それともただ忘れてしまっただけなのか。
ただ、何も無くて。
いつしか笑うことさえも忘れてしまっていた。
あの方と初めてお会いしたのはいつのことだっただろうか。
月を見上げていた夜のことだった気がする。
＿＿＿あの方は、私の前にふらっと現れた。
あの方を知れば知るほど、あの夜は＿＿＿あの方にとっても特殊だったのだと思えてならない。
だってあの方は、どこかへふらふらと放浪するような、そんな方ではなかったから。
「お前の声に誘われて来た。」
驚く私を見て、あの方は表情を変えずにそう言った。
最初は意味がわからなかった。
誰かを呼んだつもりも、何かを口にしたつもりもなかったから。
「歌っていただろう。」
そこで初めて、目の前の人物は本当に私が呼んでしまったのだと納得した。
無意識だったのだ。
「……この琉璃百合……全てお前が咲かせたのか？」
「……琉璃百合？」
意味が分からず言葉を繰り返す私に「気付いていなかったのか。」と少し驚いたような顔をして、その人は視線を私の前方に向ける。
頭に「？」を浮かべながらその人に従って、私も自分の前方に目を向けた。
「……………これ…は…」
＿＿＿あぁ、なんて美しい光景だろう。
辺り一面、琉璃百合の花畑。
夜露を弾き、月光に照らされ、凛として咲き誇っている。
「琉璃百合は歌を養分にして咲く花。もしこれをお前が美しいと感じるなら、それはお前の歌が素晴らしいものだったからだろう。」
その一言が、恐らく単純な感想だったその言葉が、何も無かった私に「価値」を与えた。
きっと貴方様はそんなこと知らないのだろうけれど。
隣に立つ白い衣装を纏った人物に視線を戻す。
名前すら聞いていなかったことに、その時気が付いた。
「………貴方は、どなたですか？」
「＿＿そうか、名乗るのを忘れていたな。」
岩の魔神、モラクス。
＿＿＿そう名乗った彼に驚いて固まるまで、あと数秒。
Ep.19 つまり回想の続きってことでよろしいか？→←Ep.17 つまりこれは夢オチってことでよろしいか？
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ブックマーク＠りんごおれ(プロフ) - ものすごく最高です応援しています！ (2023年3月4日 17時) (
レス) id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ありがとうございます……！ 大遅刻更新ですが、良ければこれからもどうぞよろしくお願いいたします……！ (2022年12月23日 22時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - とても面白い作品ですね！！楽しく読ませてもらっています。更新楽しみにしてますね！！！ (2022年12月2日 22時) (レス) id: 7981f63c4d (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - 有害物質さん» 読んで頂きありがとうございます！ 更新頻度は遅くなってしまっていますが、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです……！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
しろぐみ - ゆいﾋﾟさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます……！ もうなんと言いますかどんどん無料で読んで頂ければ嬉しいですといいますか……！ 良ければこれからもどうぞよろしくお願い致します…！！ (2022年11月27日 16時) (レス) id: 02baec0345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろぐみ | 作成日時：2022年3月30日 16時
