狙われたふたり。2 (ページ34)

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嘘なのは分かってる。
だって空き部屋なわけないし。
だけど、よく分からないけど、俺の為ということは分かる。
短い期間しか喋ってないけど、
みんな優しい。楽しいもん。
こうやって隠すのには理由があるのかもね。

あの後、夜ご飯をみんなで食べて、
今はみんなでドラマ見てる。
みんなで毎週見ていたらしい。
俺は憶えていないから、途中からでよくわからないけど。笑
でも平和で穏やかな時間だから、幸せを感じてる。

え、何このドラマ。怖。
どういう展開なのか分からないけど、
主人公？が悪いやつらに捕まって、
暗い倉庫のようなところに連れていかれる。
スタンガンされて、気を失ってる。
で、手を縄で縛られて、口をガムテープで
塞がれている。

え、え、あ、。

記憶が走馬灯のように思い出されていく。
そうだ、見覚えあるって何処かで思ってたら、
俺たちがやられた場面によく似ている。
そういえば、北山くん見ていないな。
まだ病院にいるのだろうか。無事なのか。
みんなドラマに集中しているので、
俺が記憶が戻ったこととか動揺していることとか
気付いてなさそう。
平静を装っているけど、さっきから
心臓がバクバクうるさい。
このままここに居たら、みんなにバレる。
早く北山くんに会って、無事か確認したい。

でもどうすれば？？
車の鍵持って行ったら怪しまれるし、
車乗せてくれって行ったら、どこに？って
聞かれるし病院連れて行ってくれないと思う。
どこの病院だっけ、薬の袋に書いてあるハズ、、！
バレないように薬の袋を見ると、
予想通り書いてあった。意外と近いじゃん。
歩きで行って、タクシー拾えそうなら拾おう。

いつ出る？あんま遅いと病院は入れないよね。
今の時間がチャンスかな？
どうやって？トイレって言ってそのまま出よう。
TVの音割と大きいし、みんな集中してるから
きっと大丈夫だよね。
このバクバクを早く止めたい。

「ん？佐久間どこいくの？？」

「あ、えっとトイレ。
ちょっといっぱい食べたから
お腹痛くなっちゃった。」

「え大丈夫？」

「うん、大丈夫大丈夫。」

信じてくれるといいんだが。
焦らずに玄関のドアを開ける。
本当は勢いよく開けてすぐ行きたいけど、
そういうわけにもいかないでしょ？
静かにドアを閉めることに成功した。

うわ、思ったより寒いかも。
けど、徒歩でも行ける距離。
早く行きたくて遅いのに一生懸命走った。