HPが擦り減りゆく【そ.ら.る.】 (ページ11)

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そんな、あんなに近かったなんて思わない

解らないところがあるからって、一つ分空いた席に座れば自分と同じシャンプーの匂いがして。あ、これ爆発するな、って位に心拍数が上がるからここの公式あってたかなとしきりに記憶を引っ張り出す。

ずっと自分で教えてて間違ってないかだけが気になって

「…ぁ、お前だった」

『は？』

改めて距離の近さに驚いて焦る。やばい俺チキン野郎じゃん。

ボーっとノートを眺めている彼女がちゃんと今のを理解出来ていたかなんてわからないけど
絶対顔赤いのばれると思って、すぐに元の席に戻った。

「…マックやっぱいい」

『え？いいの、けどさっき』

「別にいいのー……」

いいや。
眠いし寒いし。

…

〔もしもーし、A？〕

「ぅっ、真冬ちゃんテンション高い…。てか今何時だと思ってます？え？熟睡してたんですけどぉぉぉ！」

〔こわ……。すいません反省してます。あ、えっと用件なんですけど…〕

「はよ言えや、あああ”？」

ろくに頭が回らない状態での受け答え。わかる。今自分が凄く機嫌悪いのはわかる。
けれど悪いのは絶対に真冬ちゃんだ。あんにゃろ今夜中の1時過ぎだぞ？

暖房をつけていてもじんわり冷えてくる部屋。掛け布団を頭までかけてまるまる。

〔冬休みにペアで一日ずつ掃除するのが決まりじゃん？

嫌がらずに聞いてよ…？

今連絡網にペア決定表が回ってきたんだけど〕

思い出した。うちの学校にはそんなめんどくさい当番があるんだ。まだ冴えない頭で考える。

「真冬ちゃん？」

ひゅっと息を吞む音が聞こえた。

〔Aのペア…、彼方さんとだよ〕

「そかそか…、もう切るよおやすみぃ………」

〔えっ、ちょっ！〕

…

『やべぇ今思い出した…』

今日は真冬ちゃんとは別で一人で登校。益々寒くなってくる気温の中、二学期最後の日だということに発狂していれば、急に思い出した昨日の電話での会話。

もう学校が見えるくらいに近づいていて今頃せっせと落書きを消しているんだろうな、と考える。

(もう、来てるよね)

別にどういう訳ではない。彼が嫌いな訳ではなくむしろ…、

むしろ………？

…とにかく二人きりは気まずい。頭を抱えて歩いていれば、教室に着くのは早いもので深呼吸してドアを開いた。

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『…おはよ、一ノ瀬君…………………え』