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第9話 ページ11

後ろを振り返ると、日向の姿がそこにはあった。


気だるげそうなのはいつも通りだが、その表情は険しかった。

それでも、ここ最近会ってなかっただけだが、胸には懐かしさが込み上がってくる。



「…」



日向は何も言わず踵を返し歩き始めた。

Aは戸惑いがちにその後ろに続く。

日向の背中をぼんやり眺め、お互い無言のまま歩き続けた。


なんとなく、気まずい。

あの日、気が動転して思わず日向の手を振りほどいて寺を後にした。

そのせいもあって、話しかけることができずにいる。





とうとうどちらも話さないまま、寺へ着いた。

そこには右京や左京、加藤の姿もあった。3人はAを見つけると、驚いた顔で立ち上がる。



「A!久しぶりじゃねぇか!」

「右京さん、久しぶり。てか、みんなすごい怪我」



右京は口元の痣を手でなぞる。


「まぁ、山王も弱いわけじゃねーからな」

「ですね」



Aは会話を終えると、日向を見る。


日向は本堂に上がるための小さな階段に腰掛け、Aを呼ぶ。


「おい。お前、なんで顔出さなかった」



率直な質問。

どこか責められているような感じがして、思わずAはむっと黙り込む。



「なんだよ、村山には話すのに俺には話さねぇつもりかよ」

「おい日向…」



右京の呼びかけを遮り、日向は立ち上がる。

そのままズカズカとAの前まで来る。



「なんのためのこれだよ」





日向はAの耳につけられたピアスに触れる。

機嫌の悪い日向は、何をして来るかわからない。

Aは緊張で固まる。





「…そんなにSWORDに手ぇ出したのが気に入らなかったか?」


Aの不安とは反対に、日向は声を落としてAにそう尋ねた。


「お前にとってそんなに嫌なことだったのか?」




Aは改めて自分が子供だと実感した。

結局、なんで自分は日向の元へ顔を出さなかったのか。

それは、ただ単にあの日あんなふうにすり抜けたから、どういう顔をして会えばいいかわからなかっただけだ。

SWORD狩りは確かにして欲しくなかった。

でも、もちろんそんなこと言えるような立場じゃないのはわかっている。

だからこそ、寂しくて、不安で、何もできずじまいだったのだ。




「なんか喋れよ」


「寂しかった」






Aは、ただそれだけを言った。日向に伝えられるのはそれだけだったから。



日向は驚いた顔をしたが、そっとAの頭を撫でるとまたもといた位置に座った。









.

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ゆかり(プロフ) - めっちゃおもしろいです!早く続きが見たいです! (2018年5月25日 20時) (レス) id: 6d67b75ad8 (このIDを非表示/違反報告)
- 更新頑張って〜(*´ー`*) (2017年12月19日 22時) (レス) id: 95ee45f67a (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 楽しみにしてます(^^# (2017年12月5日 18時) (レス) id: a2a57b7e0c (このIDを非表示/違反報告)
秋(シュウ)(プロフ) - クロさん» ありがとうございます!達磨一家いいですよね…!更新頑張るのでこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m (2017年12月5日 18時) (レス) id: 19f78b416f (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 続編おめでとうございます!達磨一家めっちゃ好きです(^^* これからも応援してます!! (2017年12月3日 17時) (レス) id: a2a57b7e0c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:秋(シュウ) x他1人 | 作成日時:2017年12月2日 15時

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