【ごちゃ混ぜ】malattia d'amore【短編集】 (ページ32)

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【ボールルームへようこそ】一本の煙草【釘宮方美】ページ32

「よっし、準決勝行けた行けた」
都民大会A級戦、これで頑張ればまた先の道が出来る。準決勝までは一時間程あるのでパートナーと一旦別れて私は上着を羽織り煙草を吸いに外へ行く。
途中携帯が鳴ったので少し立ち止まり見ていると、通りがかる人の視線が刺さる。
ダンス好きの人の中には私達を知っている人がたまに居る。
「あれ、(人3)Aだ」
「知ってるのか」
「あの選手は知る人ぞ知るみたいな感じだからなぁ…パートナーが航空自衛官だから日が取れなくて大会に出てないだけで実力は相当なんだよ。普段通りなら準決勝から化けるぞ」
聞こえてますよーっと心の中で呼びかけ携帯をしまい再び目的地へと足を進める。
そう、私のパートナーは航空自衛官な為あんまり一緒に練習が滅多にできない。でもこれでいい、時間をかけながら彼奴を待っていたのだから。それに空自ってカッコイイじゃん！

「やぁ、方美くん」
目的地に着くと真っ先に方美と出会った。
「はぁ、(人3)か」
なんでこんなとこいるんだろうと思いながら煙草を取り出す。
「それ、頂戴よ」
そんな事言うもんだから驚いた、一瞬固まった。
「煙草嫌いじゃなかった？それに最後の一本なんだけど」
「いいからほら火つけて」
仕方なく火をつけて渡した。
煙草でもなんでも様になるなぁと横顔をずっと見ていると多々良くんがやってきた。
方美はその存在に気付いた途端盛大に咽る。
「あーあーあーだからやめとけって言ったのに」
「だだだ大丈夫ですか！？」
「煙草やっぱ苦いわ……」
そう言って吸いかけの煙草を渡してくるからありがたく受け取って煙を吸う。
「ちょっAさん！？それっ…」
多々良くんが顔真っ赤にしてもう思春期の少年は可愛いなぁ！
「むふふ…かわいいねぇうんうん」
「だって！それ間接キッ…キキキスじゃないですか！」
おいおいそんな声大きいと恥ずかしいでしょう！
「うるさいなぁ、いちいちそんな事で騒ぐんじゃないよ」
「でも釘宮さん…」
煙草を灰皿に押し入れて、時計を見るといい頃合いだ。
「方美くん私自衛官さんのとこ戻るからネ。多々良くん、気になるなら後でお友達になりマリサさんになり訊くといいよ」
「あぁっAさん！」
多々良くんの呼び止めを無視してすたすた歩く。今自分の顔どうなってんだろ凄いにやにやしてんだろうなぁ…
だって多々良くんが私の事Aさんって呼ぶ度に方美の眉間に皺が寄るんだもん。

一本の煙草

(準決勝全員倒すつもりでがんばらなきゃなぁ！)