【ごちゃ混ぜ】malattia d'amore【短編集】 (ページ30)

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【神呉爾羅】見て【安田龍彦】ページ30

ずっと前から上司である(人3)さんが好きだ。でも彼女には恋人が居た。だから、だから見ているだけだった、それだけでも幸せだった。
ゴジラが現れて巨災対に彼女と選抜された時は正直嬉しかったという感情が多かったが、自分の家族が亡くなったと知らされた時は血の気が引いた。
臨時内閣が発足した頃、以前より人数が減った巨災対が集められ自然と(人3)さんを探して、見つけた時の安堵感は底知れなかった。
だが当の彼女は若干目を腫らしていた。
「(人3)さん…」
気付いた時には声をかけていて、(人3)さんは涙を流した。
「安田君…ごめんね…涙止まらなくて」
こっちから話しかけたのになんて言えばいいか分からなくて黙っていた。
「彼、死んじゃった。結婚まで考えてくれてたのに」
綺麗な涙が彼女の頬をつたう度にこんなにも想われている恋人が羨ましくてたまらなくなる。
こんな状況じゃなかったら自分が(人3)さんを今すぐ抱き締めていただろう。
「そう…ですか、僕も家族亡くしちゃって…」
そう言えば彼女は一瞬驚いたような、悲しそうな、そんな顔をした。
「……みんな…みんな辛いんだよね、私だけじゃない……前見ないと、進んで行かないとね…！！」
あぁ、それでこそ自分が惚れた(人3)さんだ。
「一緒に、進んで行きましょう」
貴女の傷が少しでも早く癒えるよう側に居よう。
「ありがとう、安田君」
つきっきりで貴女の望む事は何でもやろう。
「(人3)さんには僕がついてますから」
これからも貴女自身気づかない程少しずつ僕という男を毒のようにじわりと染みこませよう。
「いつも頼りにしてごめんね」
自覚した時には既に手遅れになるように。
「いえ、寧ろ大歓迎ですよ」
僕だけを見て欲しい。想ってほしい。不謹慎だなんて知ってる。ゴジラを凍結させれば供養になるだろうか。
あぁそれより早く(人3)さんが欲しい。
死んだ恋人の思い出なんて塗り替えてしまえばいい。僕に縋って僕無しでは生きられない程に彼女を堕としたい。
そんな想いを悟らせないよう平然を装い、愛や恋と言うより欲に近いその甘ったるい毒を少量また彼女へ流し込む。
「(人3)さんに頼られるの、信用してくれてるみたいで嬉しいんですから」

見て

((早く、早く、その瞳に俺を映してほしい))