検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:20,791 hit

10 幸福 ページ10

私の話をずっと黙って聞いていてくれた蛇王様だけど。泣きそうになりながらのその演説は、大層不格好なものだっただろう。
──殺されたくない、なんて思いながら…どうして私は、「どうしますか?」なんて聞いたのだろうか。

「……Aと言ったか。…随分と、辛い思いをしてきたのだな。──私も半妖ではあるが…まだこの時代に、お前のように冷遇されている者がいるとは、思ってもみなかった。
……私はもう少し…エンマのように、制止を振り切ってでも、人間界を観る必要があったのかもしれない。」

──エンマ、前の大王様。仕事を放り出して、人間界に偵察に行っていることが多々あった…と聞いたことがある。
辛い思いなんて…そんなふう言われたのは初めてだった。…蛇王様だって、昔はエンマ様との間で、色々あったと聞くけれど。

「…半妖だから、仕方ないんです。醜い方の、半妖だから。容姿に大差がない人は多いのに…どうして私には、こんな物が…」

──抉り出せるのなら、抉り出したい。
半妖でも、綺麗だったら…父にも好かれたのかな。

「────私の嫁に来い、A。…お前を一生守ることを、約束しよう。」

「…え?」

俯いて、みっともなく泣きじゃくる私に、蛇王様はそう声をかけた。上から降ってくるその声は、優しさに満ち溢れていて。

「そんな…同情で、結婚相手なんて決めないでください。私なんかが貴方の隣には立てない──。」

「世間体などどうでもいい。私は、お前をその環境から救いたいと思った。…それと同時に、初めて人を愛おしいと思えた。…この感情を、同情とは呼ばせないぞ。
…無理強いはしない。自分の意思で決めてくれ。
──お前は、私を受け入れるか?」

蛇王様が?私を?
信じ難いことばかりだった。同情じゃなくて、愛おしい?…それはつまり、蛇王様が私を好いていてくれているということなのか。彼ならば、女なんて選び放題だろうに。──どうしてこんなみすぼらしい私なんて…。

──でも、嬉しくて、仕方がなかった。
受け入れるか、なんてそんなの当たり前だった。
初めて私を「普通の女」として見てくれた彼を、嫌う理由なんて全くなかった。

「…本当に、私でよろしいのですか…?
貴方の妻になりたい女性なんて、この世にはいくらでも…」

「他の者など興味もない。お前だから、娶りたいのだ。…私の求婚…受けてくれるか?」

真っ直ぐな目で、私を見て。にこり、と微笑む。
断る理由なんて、ひとつも存在しない。

「謹んで、お受け致します。
…不束者ですが、どうぞ末永く…よろしくお願い致します。」

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←9 真実



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (67 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
53人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

海羅 - ユーリさんこんにちわ。おもしろかったです。また続き書いてください! (尊死) (9月19日 9時) (レス) id: 286d8438eb (このIDを非表示/違反報告)
海羅 - めっちゃ続ききになります!! (9月19日 9時) (レス) @page10 id: 286d8438eb (このIDを非表示/違反報告)
asterisk👑ground - ユーリさん» ユーリさんはじめまして、asterisk👑groundと申します、宜しくお願いします(⌒‐⌒)先程ユーリさんの作品を読ませて頂いきましたが何れも面白みがあって素敵ですね。次回の内容も楽しみにしてます♪(/ω\*) (6月18日 12時) (レス) @page3 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
読んだ感想 - 生きててごめんさい?ならはよ史ね (2022年8月5日 17時) (レス) id: 2c09132fd3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキヒメ - ウッ、ヤバイ、カイラがカッコよすぎて死ぬー!これめっちゃ続き気になるわ、更新頑張ってください! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 19f1affe62 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユーリ | 作成日時:2020年3月26日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。