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彼は珍しく、一緒にバスに乗るのだと言った。
他の生徒たちの帰宅ラッシュが終わるまで、
ガラガラの図書室で、向かい合わせに座って。
私はテキトーな参考書を開いて、それを見るでも見ないでもなく
ただ整然と並んだ文字列を追うだけの時間を過ごした。
海人は何も話さなかった。薄い文庫本を開いてはいたけれど、
視線は微妙にその紙面から外れて、虚空を漂っていた。
「ねぇ、Aちゃん」
どれだけ時間が過ぎただろうか、ずっと同じ絵柄のはずの金太郎あめが
ほんの少しだけ見本からズレてしまったように、海人がそっと口を開いた。
「赤ちゃんって、どう思う？」
海人の目は相変わらず虚空を見つめたまま、
ただ問診でもするかのようにそう尋ねてきた。
「かわいいと、思うよ」
きっと、彼の訊かんとしていたのはもっとずっと違う言葉だったのだと
ちゃんと分かってはいたけれど。
そこに踏み込んではいけない気がして、そうとだけ、答えた。
「……海人は、違うの？」
私の答えに悲しげに微笑んだ後、何も話さない海人を見て
なんとなくだけれど、彼の質問の意図を察してしまった。
そして、昼休みの女の人との会話の内容も。
ただ分からないのは、彼女が、そして海人が、どんな結論を出したのかだけ。
もしかしたらまだ、何も決められてさえいないのかもしれないけれど。
知りたいと思わなかったわけではないけれど、
私などが知って良い問題ではないと思うのに、会話にできた大きな余白を埋めようと、そう尋ねた。
「俺は……かわいそう、だと思う。赤ちゃん」
そう、なんだ。その返答を聞いて、彼らの出した結論が分かったような気がした。
「どうして？」
もう決めてしまったことなら、もう訊いてしまおうと思った。
彼女の身に望まれずに宿った、ひとつの生命について。
この世界を見ないうちに消えてしまう、小さな小さな息吹について。
「赤ちゃんって、ガシャポンみたいだよ……。
コイン入れて、回すまでは楽しいのに。
出てきたら、思ってたのと違うって勝手に不満がられて。
雑に扱われて、回したこと後悔される。
出てきたほうだって、もっと大事にしてくれる人に当たれば良かったって思うし。
中身を選べないし、中身も持ち主を選べないし、
なのにガチャするのだけは、ずっと楽しい」
海人の話は一般論のようでいて、彼の記憶を遡っているのだろうと思った。
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夜木(プロフ) - きのこさん» 相場が分からないながらにお高めにしました笑 (2020年9月9日 1時) (
レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - 海人、高っけぇ！！！ (2020年9月3日 15時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 夜木さん» なるほど！終わらない夢描きます！（とは） (2020年6月15日 16時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - めいさん» いいえいえ、勝手に勘違いしてしまってすいません(*_*)めいさんの作品は海ちゃんの雰囲気にマッチしていてとても素敵です(*´ω｀*) (2020年6月14日 21時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - しおりさん» おっわーらなぁーい！ゆっめぇを〜えが〜こ〜う！という意図です！(支離滅裂な発言) (2020年6月14日 21時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜木 | 作成日時：2020年1月29日 18時
