3 ページ3
1限目から、5限目まで。
また、いつもと同じように時が過ぎていく。
何の滞りもなく、淀みもなく。時はただ単調に過ぎていく。
まるでどこまでも続く金太郎あめみたいに。
途中で彼が宿題を見せろと、特に切実でもなさそうに言って。
見せてあげれば
「やっさし〜！今度なんか奢るね！」と言うけれど、
今までそう言って本当に奢ってもらったためしなどないし、
こちらも期待などしていない。
そして彼はまたすぐに別の集団の方に呼ばれてその中に混じって行った。
彼の後ろの髪にぴょこんと立ったままの寝ぐせが、何故か私の目に焼き付いた。
彼は自由だ。何物にも左右されていないように見える。
まるで金属板を動き回る自由電子のように。
けれど、彼はすごくつまらなそうな目をしているのは何故だろう。
帰り道、私はいつもと同じ時刻のバスに乗る。
バスが空くまでテキトーに図書室で暇をつぶすから、
他の帰宅部の人よりも帰るのが遅くなる。誰にも、会わないで済む。
そのはずなのに、最寄のバス停に着いて歩き出すと彼の後ろ姿が見えた。
赤い傘をさしていた。彼より少し小柄な女の人と、ふたりでその中に入っていた。
彼らの歩いているほうは、歓楽街。
昔、父が───私の父「だった」人が───知らない女の人とそこに向かっているのを
母が見たのだと、よく言っていた。
そういう、店のあるところだ。
実は、前にも似たような景色を見たことがあった。
そのときは傘をさしていなかったけれど。
でも、たぶん彼によく似た後ろ姿の別の人なのだろうと思った。
同じ学校の制服を着ていたら、後ろ姿が似ることなんてよくあるのだから。
けれど、女の人が濡れないようにと
彼の頭が完全に傘からはみ出して、ぴょこんとはねた寝ぐせが見えた。
海人に、間違いなかった。
たぶん、女の人はあの時と別の人で。
何でそんなことを覚えているのかは、よく分からないけれど。
彼の道化の裏側を覗いてしまったのだと、気づいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜木(プロフ) - きのこさん» 相場が分からないながらにお高めにしました笑 (2020年9月9日 1時) (
レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - 海人、高っけぇ！！！ (2020年9月3日 15時) (レス) id: 0b6ff0fe38 (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 夜木さん» なるほど！終わらない夢描きます！（とは） (2020年6月15日 16時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - めいさん» いいえいえ、勝手に勘違いしてしまってすいません(*_*)めいさんの作品は海ちゃんの雰囲気にマッチしていてとても素敵です(*´ω｀*) (2020年6月14日 21時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
夜木(プロフ) - しおりさん» おっわーらなぁーい！ゆっめぇを〜えが〜こ〜う！という意図です！(支離滅裂な発言) (2020年6月14日 21時) (レス) id: 9b6e1cc694 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜木 | 作成日時：2020年1月29日 18時
