暴かないで、隠れさせて ページ13
内人くんにお別れを言って、砦に着くと、内装がすっかり変わっていた。
しばらく見ない間に、文机なんかもある。上には原稿用紙があるが、手をつけたような感じがしない。ゴミ箱のまわりと中には、紙くずが散乱している。
「……ああ、Aくん。ひさびさだね」
やっぱり少し、元気がない。でも学校と比べたらマシだ。
───生きながら死んでいる、のかも。
少しふらついた足どりで紅茶をいれようとしているので、あわててかわりにいれに行く。
「……きみがぼくよりおいしい紅茶をいれられるとは思えないけどね」
よかった、まだ憎まれ口をたたく余裕はある。内人くんに尻を叩かれたのがよほど効いたのだろう。
私は二人分の紅茶をいれ、ソファーに座る。
一口飲んで、やっぱり創也くんのいれる紅茶には負けるな、と実感した。
『それで、いったいどうしたの？』
その言葉に、創也くんは一瞬目を見ひらき、しかし冷静を取り繕ってパソコンの前の椅子に座りなおした。少し深呼吸して、問いかける。
「……なにがだい？」
ごまかしているだけれど、動揺が見てとれる。
『創也くん、なんか今日おかしいよ。なにがあったんでしょ』
「気のせいだよ。それにしてもおいしくない紅茶だね」
ズズッと紅茶をすすりあげる創也くん。じゃあ飲まなくていいよと言おうとしたが、別の言葉に変える。
『……なら、なんでそんなに悲しそうな顔をしているの？』
「……！」
創也くんの肩が、ピクリと跳ねた。
『創也くんがそんな顔してて、大丈夫なはずないよ。私でよければ話を聞くし、だから──』
「……きみに」
創也くんは拳で机をドンッと叩く。
眉はひそめられ、口はくやしそうに歪められている。今にも泣きだしそうな表情だ。
まずい、言い方を間違えたかもしれない。
「きみに、なにが分かるというんだいっ！」
こきざみに震える体。
机に崩れ落ちるように突っ伏して、怒鳴るように叫ぶ。
「きみに、なにが……」
『……』
後半の方はほとんど言葉になっていなかった。泣いているのかもしれない。創也くんなら、泣いていることを知られたくないはずだ。声を殺して、音を立てないようにすすりあげて、こみ上げるものを押し殺して。
「……すまないが、しばらく一人にしてくれないか」
すべてを拒絶するかのような、初対面の時と同じような壁が、そこにはあった。
感情を曝け出さず、弱いところをひた隠しにする。砦の外の彼だ。
私は大きく息を吸った。
『───ごめん、できない』
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鳥羽(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！なかなかの長編になりそうです(汗)更新頑張ります！ (2017年4月29日 11時) (
レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - クイーンが登場！！(≧∀≦)でもまさかの展開ですね！？��(ﾟДﾟ)続きが気になります…！ (2017年4月27日 23時) (レス) id: fc45d488d7 (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - レイさん» 喜んでいただけて何よりです(*^_^*) (2017年3月15日 7時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - わぁあ！！神宮寺さん！！(≧∀≦)素敵です！！ (2017年3月14日 11時) (レス) id: fc45d488d7 (このIDを非表示/違反報告)
鳥羽(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！頑張って更新しますね( ´ ▽ ` )ﾉ (2017年3月12日 17時) (レス) id: 4acd08ad41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥羽 | 作成日時：2017年2月11日 21時
