Leucadendron Jade Pearl

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樹side


俺は夜の街を全力疾走した。

走って走って、苦しくて倒れそうになりながらも
きょもの顔を思い出して走った。


一度訪れた事のある彼のマンションへ向かう。

あの時は部屋の中に入れてくれなかったけど
今思えばきっとあの男と住んでいたからなんだろう・・。


電話をかけて、何度目かのコールのあと「もしもし」
て遠慮がちなきょもの声が聞こえて来た。



樹「会いたい・・・」

大「樹・・・」.

樹「今、マンションの前にいる」

大「俺ね・・・もうそこに居ないんだ。あの人とお別れしたから・・・」

樹「へ？・・きょも！！今、どこにいる？」

大「公園・・樹の家の前の・・・」

樹「待ってて！！今行くから！！」


ここからはそんなに離れてはいない。
また走り出すと、空から雨が降って来た。

タクシーも捕まらずひたすら走る。



きょも

きょも

待ってて！



俺がずぶ濡れで到着すると、彼もまたずぶ濡れで、
それでも俺を見つけると眉根を寄せて笑った。


大「樹・・・」


大「・・俺・・やっぱり樹の事・・・忘れる事なんて出来なかった・・・」


微笑んでいた顔が急に泣き顔になる。


樹「きょも！！」


雨足が早くなって雨が地面を叩きつける音と、俺達のバシャバシャという足音が混ざり合う。

お互いに手を伸ばし、ぶつかり合うように抱きしめ合うと濡れたシャツを通してほんのりと体温を感じて泣きたくなった。


大「樹・・・樹・・・愛してる。もう離れたくない」


樹「俺も・・・愛してる。

親父がお前の事をどう思ってたのかなんて俺にはわからない・・・。

けど、今まで生きて来た分も含めて俺がこれからきょもの事いーーーっぱい愛するから。
たくさんたくさん愛するから！！
絶対誰よりも幸せにするから・・・。

だから・・・・・俺とずっと一緒にいて・・・」


大「樹・・・」


きょもの顔を見ると頬が真っ赤に腫れている。
そっと撫でると少し顔を歪めた。


大「・・あの人と別れようって言ったら殴られちゃった・・・。でも、もう関係無くなったから・・・」

樹「そっか・・うん・・・うん・・・」

樹「愛してるよ・・」

大「俺も・・・俺も樹の事、愛してる・・」


見つめ合って引き寄せられるように唇を重ね合わせる。

真っ黒な空から落ちてくる冷たい雨に打たれながら、それでも俺達は幸せだった。

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