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樹side
その後「お礼に食事でも」という彼の提案で、帰りの道すがらレストランに立ち寄る。
向かいの席に座った彼がまた俺をじっと見つめた。
大「田中さんはお父さんに似てますか・・・?」
樹「・・・いや、俺は母親似です。父とは全然・・」
大「そうですか・・・」
・・・どうしてそんな事。
ふとそんな疑問が頭をかすめたけど、話題が変わった事でその事は忘れた。
それにしてもまだ会って2回目なのに会話が弾む。
優吾以外で短時間にこんなに打ち解けた人はなかなかいない。
こんな風に時間を忘れて話をしたのは本当に久しぶりで、そのレストランを出る頃には「樹」「きょも」て呼び合うまでに仲良くなった。
そしてその日から俺らは頻繁に会うようになり、
つまらなかった俺の日常は、キラキラと輝く薔薇色に変化して行った。
〜 〜 〜 〜 〜 〜
樹「ふんふんふーん・・・」
優「なんか、ご機嫌だね。最近・・・」
樹「んふふ・・・聞きたい?」
優「・・・いや、別に」
樹「なーんでだよっっ!!!」
優「ふふ・・・。樹が元気ならそれでいいからだよ」
樹「///」
優吾の柔らかな微笑みに心が温かくなる。
彼は人たらしだ。
出会った頃からそうだった。
優吾が頑なに遺産相続をしないというのに、俺は無理矢理頼み込んで遺伝子検査をしてもらった。
何故なら、初めて会った時からずーっと一緒に育ったと言ってもいいほど違和感の無い彼とは、血の繋がった兄弟でいたかったから。
彼との確固たる絆が欲しかったのだ。
結果は正真正銘の兄弟。
最悪な家庭環境で育った俺にとってそれは唯一の光だった。
その結果を聞いて泣きそうになっている俺を差し置いて、優吾の方が先に声を上げておんおんと泣いていた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を俺の胸に擦り付けて「樹と兄弟で嬉しい」って嗚咽していたのが懐かしい。
そんな事を思い出しながら
店の準備を始めた優吾に向かって俺は
樹「ねぇねぇ・・。俺、好きな人出来たかも・・・」
て、にやけながら話すと、彼はちょっとびっくりした顔をしたけど
優「良かったね」て言って、目尻をクシャクシャにして笑ってくれた。
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櫂(プロフ) - thhyさん» thhy様、とても嬉しいです!かなり昔の作品ですが私もお気に入りなので、thhy様のコメント頂けて機会があったら続編も書いてみたいなって思えました。ありがとうございます(^^) (2月9日 0時) (レス) id: 10b1900e3d (このIDを非表示/違反報告)
thhy - このお話とっても面白いので更新待ってます! でも、無理だけはしないでくださいね! (2月3日 11時) (レス) @page50 id: 69657aab33 (このIDを非表示/違反報告)
櫂(プロフ) - sailさん» うわぁーん!sailさんお久しぶりです!嬉しい!読んで頂いてるだけでも励みになります(//∇//)しかし今回は難産でした笑。jsygはいつも書いてるので良かったのですが残り2組が難しかった。でも大好きって言ってもらえて良かった(≧∇≦)まだまだ精進せねばです笑 (2021年6月25日 1時) (レス) id: 7e2afa0867 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - お久しぶりです!最近立て込んでいて感想等書けなかったのですが、櫂さんの作品をいつもすごく楽しく拝読しています!このお話も三者三様にラブラブで少し切なくて大好きでした。ラストはまさに大団円で…涙。彼らの幸せな姿をまた見られれば嬉しいです。応援してます! (2021年6月25日 0時) (レス) id: b8f530ada7 (このIDを非表示/違反報告)
櫂(プロフ) - サキさん» サキ様ぁ!コメントありがとうございます(^^)そう言って頂けるとこちらこそ幸せな気持ちになります(//∇//)作品を作るうえで行き詰まった時に、皆さんからのコメントを読み返してパワーに変えてるんですよ(≧∀≦)本当にありがとうございます。更新頑張りますね(^^) (2021年5月19日 16時) (レス) id: 7e2afa0867 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫂 | 作成日時:2021年4月13日 17時