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本当に腰を抜かしていた彼なのだろうか。まるで別人のような冷酷な声のトーンに肩が竦む。
「あ〜ほら！翔太が威圧するからAちゃん怖がってんじゃん！」
「ハ？別に俺は……」
ごにょごにょと言い訳を並べるこの彼の目は露草色をした綺麗な目だった。
散々言い訳を並べ終わったのか目線は合わなかったが「…まあそういうことだから。その……ごめん」と謝られた。
躑躅色の目をした彼は彼女の手を取ると「ゆっくり歩けそう？」と顔を覗き込む。
まだ分からないと遠慮がちに頷くとにんまりと笑いかける。
「いっちょ佐久間さんに甘えてみちゃう？」
「ハ！お前っ！佐久間ずりぃぞ！」
「翔太も照の筋トレメニューサボらず続ければいいのに〜〜」
「いや照のメニューについていけてんのお前か涼太くらいだからな？無理だってあんな鬼メニュー」
「ヒヒッ Aちゃん落っこちないようにちゃ〜んと佐久間さんに抱きついておくんだよ〜〜？」
このとき所謂お姫様抱っこを人生で初めて経験した彼女は何かアトラクションにでも乗っている気分になって楽しかった。
躑躅色の目をした彼と露草色をした彼と共にやってきたのはこの組織の共有スペースなるところ。
たくさんのPCが並び端のテーブルには無線機やらインカムなどまるでSP映画のワンシーンのようだった。
中央のテーブルには食べかけの食事やお菓子がそのままでソファーには毛布を被って眠る人間が3人
それとゲームをする人間と腕立て伏せをする人間、キッチンに立つ人間で6人を確認する。
このとき、幼い頃からの慣れが怖いと感じた。
「あ、ようやく起きれたんだ」
「ほらぁ〜〜みんなぁ〜起きて起きて〜〜！Aちゃんが目覚めたよ〜〜！」
紅緋色をした彼はキッチンからこちらに向かって歩いてくる。お姫様抱っこの状態から地面に降ろされ手持ち無沙汰な彼女は視線をキョロキョロさせる。
「そういえば、キミをここに運んできたのは照だったよね」
「ああ……あの時は挨拶出来なくて悪かった。」
もう遠い記憶だが常磐色の目をした彼の連絡で車を運転してきたのが彼だったのか。彼の目もまた、檸檬色といった不思議な色をしていた。
ソファーで眠る男たちを叩き起す躑躅色の彼だがなんだか申し訳なくて『あの……』と声を出しかけて急に身体がずっしりと重くなった。
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作者名：usagi
| 作成日時：2020年11月22日 19時
