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「…ただいまー」
がちゃんとドアを閉めると、薄暗い家の中に私の声がぽつんと響く。
数秒待ってみても奥から声が返ってくることはない。
それでも幼き日のように、また温かい声が聞こえてくるような気がして……どうしても期待してしまう自分がいる。
一人寂しい家の中、今は亡き父と母の顔を頭に思い浮かべた。
*
朝起きると何故か涙で顔が濡れている。
今日に限ったことではなく、毎朝そうだ。
白色のパジャマの袖で顔をゴシゴシと擦ってから、何か嫌なものでも洗い流すように洗面所で顔を洗った。
テレビの電源を点け、いつもと同じ朝のニュース番組にチャンネルを切り替える。
丁度お天気キャスターの女性が、今日から梅雨入りだということを私の目を見つめて話し始めるのであった。
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「……何かあったか?」
ざあざあと降り続ける雨の音に紛れて、心配そうな快斗の声が聞こえた。
「え?……ううん、なんにもないよ」
ただキッドとの一件が終わって以来、家に一人という現実に前より寂しさを感じるようになっただけ。
「そうか……嫌なことでもあったら、すぐに相談しろよ」
俺に言いづらかったら青子にでもいいからさ、なんて細かい所まで気にする私の恋人は、まさに紳士だ。
「そういえば、今日から梅雨入りだって」
特に面白くもない会話をして、水溜まりを避けて歩く。
じめじめとした空気が漂う中、いつの間にか江古田高校へ辿り着いていた。
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もっさ(プロフ) - めっちゃめっちゃおもろかったです!更新楽しみにしてます!! (2019年11月29日 17時) (レス) id: 487c093ca1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華美 | 作成日時:2019年6月23日 19時