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『〇月✕日
月の光を浴びるとビッグジュエルの中に赤く光るパンドラが現れ、涙を流すと言われている。
その涙を飲んだ者は不老不死の力を手に入れられる』
遺品整理で見つけた母の日記。
両親が死んだ日のページには、メモのように走り書きでそう書かれていた。
その時は全く意味が分からなくて、気にも止めずにいた。
「謎の組織もそのパンドラを追っていたらしくてな。親父がパンドラに手を出したために殺されたってわけなんだ」
「……」
「その組織より先にパンドラを見つけて破壊するのが俺・怪盗キッドの目的さ」
快斗は少し憂いを含んだような目で微笑んだ。
その顔を見たら、堪えきれなくなってしまって。
「……っもしかしたら、私の両親も"パンドラ"と関わっていたのかもしれない」
…考えるよりも先に口走っていた。
はっと我に返るも、快斗は目を見開いてこちらを見ている。
「どういうことだ?」
「わ、分からないけど……私の親も、八年くらい前に死んだの」
私は工藤新一のような名探偵では無いからよく分からないけれど、たしか両親の死には不審な点がたくさんあった気がする。
「母の日記の最後のページに、走り書きでパンドラの特徴が書かれていたの」
「なに?」
「それだけで断定するのは難しいけど、もしかしたら快斗のお父さんの死と繋がるものがあるんじゃないかなって」
快斗は目を白黒させて黙り込む。
きっと父親の死に関わる情報が入り、驚いているのだろう。
私だってそうだ。
まさか、母の日記の"パンドラ"という不思議な単語が死に関わっていたかもしれないだなんて、考えるだけで身の毛がよだつ。
「……そうか。とりあえず、俺はキッドを続けてパンドラを探すよ」
雨音だけが響く快斗の部屋の中、五月蝿いその音をかき消すように彼はそう呟いた。
「それにしても、Aの両親は亡くなっていたんだな」
快斗は同情するわけでもなく、静かに言った。
「そんな言い難いこと、俺に話してくれてありがとな」
……やっぱり紅子ちゃんの言う通り、快斗は"そんな人"じゃなかったみたい。
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もっさ(プロフ) - めっちゃめっちゃおもろかったです!更新楽しみにしてます!! (2019年11月29日 17時) (レス) id: 487c093ca1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華美 | 作成日時:2019年6月23日 19時