甘美な日常と、漆黒の闇を貴方に。【名探偵コナン】 (ページ33)

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＊episode 腐れ縁＊ページ33

＿＿翌日。

「この建物全部が貸し切り！？」
「ああ、ここはジイちゃんの知り合いが経営してる旅館らしいぜ？無料で歓迎してくれるってさ」

へぇ、と感動しながら目の前の大きな建物を見上げる。看板に書いてある名前もガイドブックで見た事のある、結構有名な旅館だったはず。

「さ、荷物置いて泳ぎに行こうぜ」
「＿＿ったく、私が泳げないの知ってて言ってるでしょ」
「俺が教えてやるよ」

ニッと白い歯を見せ、快斗が笑う。その無邪気な笑みに抗うことも敵わず、頬を膨らませながら荷物を置いて隣の部屋へ。

「着替えるけど、覗かないでよ？」
「だ、誰が覗くかよ！」

クスリと笑い、扉を閉めた。

＊
「ええっ、何でこれ着なきゃいけないの！？」

部屋に戻った途端、頬を真っ赤に染めた快斗にばさりとラッシュガードを投げつけられた。しかも、ちゃっかり少し快斗のとデザインが似ている。

快斗が片手で顔を覆って天井を仰ぐ。

「良いから着ててくれよ、マジで」
「折角頑張って選んだのになぁ」
「俺以外の男に見せたくねぇんだよ、そんな････その、」
「その？」
「～～っ、ほら行くぞ！」
「はーい！」

言われた通りにチャックを上まで上げ、快斗の腕に手を回してぎゅっと抱きついた。頭上でふふっという小さな笑い声。

顔を上げれば、快斗の唇が私のそれをそっと掠め取る。

「････可愛いじゃん」
「本当？可愛い？」
「ああ、今すぐ抱きたいくらいにな」
「････ばかいと」

妖艶な笑みを浮かべる快斗に熱を帯びた頬で精一杯抗議するが、内心少し嬉しくって。
すぐ側にあるビーチを二人で歩く。

「いやぁ、お美しいお嬢さんだ！」
「あ、馬鹿････！」

いきなり肩に手を置かれたものだから、咄嗟に脚が動く。快斗に呆れたような声で忠告されたことも叶わず、相手の顔面に私の脚が＿＿

「あれ、小五郎さんじゃないですか！」

＿＿直撃しなかった。

否、正確には直撃させなかったのだ。
理由は簡単、振り向いた瞬間に見覚えのある顔が視界に映ったからである。

彼が居るということは恐らく、

「あ～、七瀬Aさんだ～！」
「久しぶりですね、コナン君？」

にこやかにしているが、内心こっそりと舌打ちをする。

････やっぱりこいつも居たか。