白黒パレット【怪盗キッド/黒羽快斗】

episode24. ページ24

「いてっ……！もう少し優しく、」
「わかったから！動かないで、じっとしてて」

状況説明が終わり、Aの家にお邪魔して今に至る。消毒液が染みた痛みに顔をしかめたが、優しい声色で飛ばされた叱咤に口を噤んだ。
腕に丁寧な手つきで巻かれた包帯を少しの間眺めていると、真っ正面から抱きつかれてバランスを崩しかける。胸に顔を埋めた彼女の口から出たのは、「ごめんね」の一言だった。

「また、嫌な思いさせちゃった……」
「また？」
「さっきの、」
「……ばーか」

顔を上げたAの額を軽く小突く。
反射で目を瞑ったその目尻には光る粒が見え、それを指でそっと拭ってから両手で顔を固定する。
びく、と震えた彼女は今にも消えてしまいそうだ。

「なに、」
「俺が家まで送るって言い出してなかったらお前はどうなってたと思う？俺もお前も無事、尾けてきたやつは警察に捕まった、これで良いじゃねーか」
「で、でも、快斗は怪我してるじゃない」
「……お前を守るために作った怪我なら、別に嫌じゃねーし」

普段の自分なら絶対に言わないであろうことを素直に口にすると、Aの頬が温かくなる。
手の力を抜くと再び胸元に顔を埋め、腰に回していた腕の力を少し強める彼女。

「なんか今日の快斗かっこいい、ずるい」
「"今日"じゃなくて"いつも"だろ？」
「そうだよ、ばか」
「馬鹿はねーだろ……」

若干キレ気味に肯定したAに苦笑。
お互いにほぼ生まれたときから一緒だったからか、一緒に居て一番安心するのは断トツで彼女だ。
甘い空気に身を委ね、ぽんぽんと優しく背中を叩いていると、整った寝息が聞こえてきた。
頭を撫で、ふっと笑う。

「いつも助けられてるのは俺だよ、ばーろ」


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