白黒パレット【怪盗キッド/黒羽快斗】

episode21. ページ21

＿＿場所は変わり、鈴木大博物館前。
土曜ということもありたくさん人が来るんだろうな、とは思っていたがその予想を遥かに上回る程の大勢の人で賑わっている。
検問を通り抜けるのは容易いことだろう。

いつもの私服とは違う、ボーイッシュな服装でキャップを被り軽く変装してインカムからの連絡を待つ。
一応電源は入れっぱなしのため、寺井さんと快斗の会話の内容はリアルタイムで把握住み。
間近で話しているように聞こえるため、耳がこそばゆいような、そんな気持ちになる。

「＿＿あれ、」

すれ違った人物に思わず振り返り、転送されてきた画像と何度も確認して口角を上げた。
江戸川コナン君、発見。

「ん、どうした？A」

零れた声に即座に快斗が反応する。
ノイズがどうしても少し混じってしまうのが残念だが、いつ聞いても安心する声に気付かれないよう声を抑えて笑みをこぼす。

「見つけたよ、江戸川コナン君」
「オッケイ。現在地は」
「えっとね、大きい車の近く……カメラからの映像が集まってるみたい。その中に入っていったよ」
「わかった。サンキュ、A」
「ん、どういたしまして」

ふふっと快斗の笑う声が聞こえる。
間近でそれを聞ける幸せを噛み締めながら、予告時間に近づくにつれて熱がこもる観客たちに混ざる。
寺井さんの合図のようなものも聞こえたが、ノイズがひどくて聞き取れなかった。

「んじゃあショーの初日を始めるとすっか！」
「気をつけてね、快斗」
「おう！怪盗キッド様のショー、しっかりと目に焼き付けとけよ」
「言われなくても、そうするつもり」

＿＿予告時間ちょうど。
観衆の間で歓声が沸き起こる。
なにせ鈴木大博物館の上空に、ハンググライダーで優雅に空を飛ぶ月下の奇術師が現れたのだから。

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