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episode15. ページ15

「いひゃいっ!」

頬をつまんだ手に少し力を込めれば、びくりとAの体が跳ねた。瞳に浮かんだ薄い涙の膜がその痛みを物語っている。
滑らかな肌と弾力のある柔らかい頬が淡く染まり、そっと手を離すと両手でそこを押さえ涙目で俺を睨むA。

「な、何すんの!」
「ふは、睨んでんのか?それ」
「どこからどう見ても睨んでるでしょ」
「嘘つけ」

彼女の頭の横についた手に意識を向け、これからどうしたものかと考える。
視線を横の壁に投げ、合わせようとしないA。先程つねったときのものがまだ残っているのだろうか、その頬は淡く染まっている。
いっそのこと、このまま行為に及んでしまおうか。否、さすがに駄目だろう。

「だめ、」

それを察したのか、小さく声を上げたAが優しく俺の胸板を押し返す。
ん、と小さく頷いてみせれば手足を投げ出したままほっとしたように微笑んだ。
手を離して姿勢を戻し、ソファに腰掛けながら甘い香りのする髪の毛を撫でる。

「久々だな、二人っきりでこんなにゆっくり過ごすの」
「小さいとき以来だね」
「ああ。あのときも、兄妹みたいに仲良くしてたっけな……」
「兄妹、か」

言葉を反芻し、目を伏せるA。

「ん、どうした?」
「ううん、なんでもないや」

取り繕うように笑い、彼女が小さく欠伸をする。
寝ていいよ、と言うと怪訝な眼差しを向けられた。日頃の行いを見れば一目瞭然だろう。

「大丈夫だよ、襲ったりしねーっつの」
「……ん。ソファだと体痛めるから快斗のベッド貸して」
「贅沢なやつ!」

仕方なく文句を言いながらも抱き上げ、女らしい柔らかさに驚く。
身体も軽い。「ちゃんと食ってんのか」と訊くと「当たり前でしょ」と返される。
そんなたわいもないやり取りを繰り返し、小さく寝息を立て始めたAに微笑む。
そっと降ろして布団をかけ、「おやすみ」とだけ言い残しリビングに戻った。

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シルビア-Silvia-(プロフ) - つばき-tubaki -さん» ありがとうございます!!!自分でも書いてて叫びそうになりながら頑張りました(?)お褒めの言葉嬉しすぎます……!頑張りますね! (2019年6月9日 17時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)
つばき-tubaki - - シルビアさんもHoneyWorks さんが好きなんですね私もです!!!アリサちゃんのセリフが出てきた時嬉しくて叫びました(笑)。Honey Works さんみたいに面白いです!更新頑張って下さい! (2019年6月9日 17時) (レス) id: 4f1f916ec6 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア-Silvia-(プロフ) - 天音さん» そうです!!!アリサちゃんのそのセリフが可愛すぎてどこかで使えないかなぁと思って入れました笑HoneyWorksさん大好きなんですよ……!!ありがとうございます、更新頑張りますね!! (2019年6月8日 23時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)
天音 - 恋人になったんですね!ずっといつ告白するのかハラハラしてました。あの、もしかしてepisode41の「好きすぎて、やばい」ってHoneyWorksさんの「生意気ハニー」の高見沢アリサちゃんの台詞ですか?(違ったらごめんなさい)更新頑張って下さい(長々とすみません)。 (2019年6月8日 22時) (レス) id: d5e2e87506 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア-Silvia-(プロフ) - 美紅さん» お褒めの言葉ありがとうございます〜!これからもドキドキさせられるよう頑張りますね笑 (2019年5月1日 15時) (レス) id: 1b30589c5a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年3月20日 14時

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