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▼33話 ページ36

廊下を駆け回る足音。教室の後側を独占する1軍の話し声。ガラガラと出入り扉をスライドする音__。
猛烈なフラッシュバックに襲われた。押し寄せる恐怖と、焼けるような痛みと、赤く染まる視界と。
着崩したワイシャツの襟は冷や汗でぐっしょりと濡れている。激しく叩きつけるような鼓動に胸がきりきりと痛んだ。

「快斗、顔真っ青だよ?大丈夫?」
「あ……っあぁ、プリントだよな。サンキュ」

向けた笑顔はきっと引き攣っているだろう。
そうじゃなくて、というAの呟きは彼女を呼ぶ青子の声と共に遠ざかっていく。何度かこちらを心配そうに振り返った視線には気付かないふりをした。
口からこぼれ落ちるのは深いため息。机の中からプリントを引っ張り出し、気分転換にでもと目を通した瞬間に予鈴が鳴った。手から滑り落ちたペンが転がり、机の脚に当たり、落ちる。
それを拾って俺に手渡したAが隣に座った。

「ねぇ、本当に大丈夫?変な夢でも見た?」
「なわけねーだろ。それより自分の心配しろよ」
「私の?なんで?」
急に話を振られたからか、彼女が目を丸くする。
「おめー教科書も無しに英語受けるつもりか?リスニング1問取れて喜んでたやつがシャドーイングたぁいい度胸じゃねぇか」
「あ」



「あれ、Aちゃん待っててくれたの!?」
「別に気ぃ遣わなくても良かったのに」
「んーん、私が好きで待ってただけだし」

なんだかんだで掃除を終わらせ、鞄を取りに教室へ戻ると寄りかかっていたロッカーから身体を起こすA。かなり長引いたのでもう帰ってしまったと思っていたから、驚くと同時にどこか安心した。
部活動に向かう生徒の波をかき分けて俺達は速やかに帰路につく。小さい子連れやお年寄りが行き交う大通り。二人並んで歩く俺と青子、Aは静かに会話を聞きながらその後をついてきていた。

「…今何時?」
「ん、4時じゃねぇの?防災無線入ってたし」
「そっか」
「何かあるの?」
「ううん、気になっただけ」
「ならいいけど…」

煮えきらない顔で歩きだしたかと思えば「そうだ、聞いて聞いて!」と顔を輝かせる青子。

「言わなくてもンなでけぇ声出されたら聞こえてるっつーの」

茶々を入れつつも、やはり物言いたげな顔をして歩く後ろの彼女が気がかりで仕方なかった。

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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ!!!2年前にもコメントしてくださった方ですよね…!?本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜!!ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです! (5月14日 8時) (レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます!!!お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです( ; ; )応援しています!! (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます!!!好きって言っていただけて嬉しいです!がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この作品とっても好きです!!これからも頑張ってください! (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月22日 10時

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