▼1話 ページ4
＊
＿＿とある春の日の昼下がり。
窓から差し込むうららかな日差しに眠気を誘われつつ、欠伸を噛み殺して教師の朗読に渋々耳を傾ける。
古典の授業は退屈である。寝不足ついでに窓際の日光を浴びられる特等席ときたものだから、最早眠れと言われているのではなかろうか。
まあ寝不足は下調べに時間がかかったからだけれど。
「…いと！かいと！」
「……ん」
頬杖をつき瞼を閉じそうになっていた俺を小声で呼ぶ幼馴染の声。ちらちらと教師の動向を伺いながら肘で優しく小突いてくる彼女に「ンだよ」と不満混じりに返すと「ページ変わったよ」と呆れ気味なご様子。まったく、という言葉の後に付け足された「ちゃんとしてよね」という一言が余計だったが。
「じゃあ白羽、ここ読め」
教師の指名に「ひえっ」と小さく漏らして慌てて椅子を鳴らしながら立ち上がり、先程とは一転、真面目に教科書を朗読する彼女。その凛とした横顔に胸が高鳴った。
波がかった艶やかな黒髪が揺れる。緩く肩に流されているそれは俺好みの長さ…いや、どんな長さでも似合うだなんて。
起きていて、良かったかもしれない。
流石にこの気持ちの正体は気付いていた。どうやら傍から見ればあからさまだったらしいが。
彼女に片想いまっしぐらな俺に当の本人は気付かない。クラスメイトからは「諦めた方が良いかもな」と笑われたこともあった。生憎諦めが悪い方な俺は今でも彼女に少なからず淡い期待を抱いているけれど。
朗読を終えた彼女が「ふぅ」と息を吐き出して腰を下ろす。退屈で長々しい筈の朗読があっという間に感じられたのは気のせいだろうか。
ふわりと香りが舞った。バニラのような甘い香り。俺の鼻を擽り、ときめかせる。
こういうところだ。彼女はこうして無自覚に沢山の男を落としてきたのだろう。
そんなことを時折考えながら過ごしていたが、遂に両手で数えるに足りぬ年月へと差し掛かってしまった。思い切って何度かデートに誘ったことはあったが、漫画のようにそう早く甘い展開へは踏み出すことができなかった。
幼馴染という枠は、天秤にかけるにはあまりにも居心地が良すぎるのだ。易易と踏み越える方が珍しいことはとっくに思い知らされている。
「ほら、ぼーっとしないの」
「え？ぁ…わり」
諭すような声にふと我に返る。
「どうせ夜更かしでもしてたんでしょ？」そう小声で呟いて、彼女は再びノートをとり始める。後で見せてもらおう、なんて思いながらその横顔に視線を流した。
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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ！！！2年前にもコメントしてくださった方ですよね…！？本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜！！ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです！ (5月14日 8時) (
レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます！！！お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです（ ; ; ）応援しています！！ (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます！！！好きって言っていただけて嬉しいです！がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - この作品とっても好きです！！これからも頑張ってください！ (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)
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