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▼27話 ページ30




翌日。
ニュースアプリを開くなり何なり画面いっぱいに映し出された太字の見出しに思わず口元が緩んだ。
一番大きなサイズで載せられた写真には展示ケースの上に降り立った純白の怪盗が写されている。
他にも写真が添付されていたが、怪盗が少女を抱えて飛んでいた旨の記述は無かった。ほっと胸を撫で下ろす。


「あ、またタブレットいじってる」


耳に飛び込んでくる幼馴染の声。
絹糸のような黒髪が袖をまくった腕に触れ、くすぐったさに少しだけ首を竦める。


「別にいいだろ、中休みだし」


覗き込んでくる彼女の額を指で押すと小鼻を膨らませながら額を手で押さえて視線で抗議してくる。
やがて彼女は画面に視線を戻すと「盗まれた宝石ってこれ?」と一枚の写真に指を添えた。


「そうだな」
「へ〜…凄い綺麗だね」
「ま、俺のには敵わねぇけど」
「…え?」


やべ、と咄嗟に口に手を当てるが遅かった。
彼女が目を円くしてぽかんと口を開ける。窓から差した日光が透き通った紫紺の瞳を抜けていく。


「快斗も持ってるの!?宝石!」
「え」


興味深々な彼女に「ああ、まぁ…」と言葉を濁らせる。俺のものになるかどうかはオメー次第だけど。
一方、完全に信じ込んだらしい彼女は首を傾げる。


「どんな宝石なの?色とか形とか…」
「教えるときが来たら教えてやるよ。それまで鏡でも見てろって」
「鏡なんて見ても自分しか映らないでしょ」


ふぅ、とため息がこぼれた。それでいいっつーの。
予告通り奪い去られた"夜の宝石"。月下で最も美しく輝くというそれは、同じく月下の名を語られる奇術師に見初められたたった一つの宝石なのだから。


「そういえばAちゃん、昨日怪盗キッド見に行ったんでしょ?どうだった?」


肩越しに声を掛けられて振り向くと、恵子がニヤニヤする口元を手で必死に隠しながら立っていた。どうやら一部始終を聞かれていたらしい。
余計なこと言うんじゃねーぞ、と視線で釘を刺す。そんな俺とは裏腹に「うーん」と曖昧に唸るA。


「なんか全然覚えてないんだよね…白馬君のハンカチ届けに行ったらキッドが居て…んん…?」
「え、キッドに会ったの!?」
「うん!でもそこからはわかんないや…」


彼女が眉を下げ、申し訳なさげに苦笑する。
昨日嗅がせた布に染み込ませた薬は直前の記憶に作用してしまうものだったから、まあ仕方無いのだが。


「僕がどうかしたのかい?」


降ってきた甘ったるい声。うげ、と顔をしかめる。

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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ!!!2年前にもコメントしてくださった方ですよね…!?本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜!!ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです! (5月14日 8時) (レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます!!!お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです( ; ; )応援しています!! (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます!!!好きって言っていただけて嬉しいです!がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この作品とっても好きです!!これからも頑張ってください! (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月22日 10時

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