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▼24話 ページ27

「え、ぁ…ちょ、何が起こってるの!?」
「喋ると舌を噛んでしまいますよ?」


階段を駆け上がる彼に問うも、飛んできた冷静な声で一蹴されてしまう。後ろから追いかけてくる足音と銃声に冷や汗が頬を伝った。
本当は私を抱えて走る余裕なんて無いはずなのに。
せめて振り落とされないようにと彼にぎゅっとしがみつく。その肩の向こうを見ると黒服の男の人が銃を構えながら追いかけてくるのが見えた。
その銃口がやけに近く見えて、恐怖を煽られた私はきゅっと目を閉じて彼にしがみつく力を強めた。


「手荒な真似をしてしまいましたね」
「いえ、私は気にしてないので…!」


少し男の人を引き離したところでそっと踊り場に降ろされ、下唇を噛んで衣装に手を突っ込むキッドをただ呆然と見つめていた。
彼が何かを探している間にも足音はどんどん近付いてくる。どうやら人数も増えているようだ。


「動くな、怪盗キッド!」
「伏せろ!」


声が聞こえたのはほぼ同時だった。
キッドの鋭い声に咄嗟に床に伏せると、銃口から放たれた弾が頭上スレスレを掠める。後ろの壁に視線をやれば金属製の銃弾が深くまでめり込んでいた。
キッドが片手に持ったボトルの中身を口に含み、ライターの火に向かって思い切り息を吹きつける。建物には引火しないような見事なコントロールで。
矢のように進む炎に相手が怯んだ隙を狙い、もう一度私を抱き上げて上へ上へと足を進めていった。


「キッド…?」
「__ッ」


モノクルの奥で碧の瞳が一瞬揺れる。
何かを言おうとした彼の口が開きかけるが、すぐにそれは再び引き結ばれてしまう。
先程の炎が相手の服に引火したのか、僅かな焦げ臭さが鼻をついた。彼らはどうやら対応に追われて足止めをくらっているらしい。
ぎゅ、と無言で腕の力を強める彼。そっと身体を寄せると伝わってくる鼓動は不思議と心地好い。
上を見ると遠くに天窓が見える。いつの間にか、響く靴音は全速力で走り続ける彼のものだけになっていた。

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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ!!!2年前にもコメントしてくださった方ですよね…!?本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜!!ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです! (5月14日 8時) (レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます!!!お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです( ; ; )応援しています!! (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます!!!好きって言っていただけて嬉しいです!がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この作品とっても好きです!!これからも頑張ってください! (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月22日 10時

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