検索窓
今日:251 hit、昨日:882 hit、合計:121,272 hit

▼22話 ページ25

「あ、この辺で大丈夫!…だと、思う」
「わかりました…では、くれぐれも気を付けて」
「うん!送ってくれてありがとう」


キッドコールが沸き起こる人だかりをかき分けて、美術館がよく見える場所で白馬君と別れた。
見上げれば空はもうすっかり暗くって、観衆の構えるスマホの明かりがちらほらと辺りを照らしている。ワンセグを起動してニュースへとチャンネルを切り替えると美術館に入っていく白馬君の姿が映されていた。
マイクが拾う数々の黄色い声。彼の人気を目の当たりにすると同時に、彼と一緒に来る際に彼のファンの目に触れなかったことにほっとする。


「__three!」


それは誰が口にしたのであろうか。
咄嗟に腕時計を見れば既に予告時間へと針が進もうとしていたから、これはきっとカウントダウンだろう。
ざわめく観衆。急激に熱くなる場の雰囲気。


「__two!!」


声が重なる。
笑顔で拳をぐっと突き出す人、応援のプラカードを掲げる人、空を見上げる人、それぞれの声が。


「__one!!!」


刹那、美術館の上空に煙幕が現れる。
それを突き抜けるのは真っ白なハンググライダー。
わっと地上で歓声が弾けた。
怪盗はそのまま夜空をぐるりと旋回、建物の死角に消えていく。彼の姿が見えなくなってもなお観衆の昂りは収まる気配を見せない。
片耳に突っ込まれたイヤホンからは彼の犯行の開始を知らせるリポーターの実況が垂れ流しになっていた。


「っうわ、」


もちろんキッドの姿を一目見られたからと帰ろうとする人達も居るわけで、その人波に押されてバランスを崩しかける。慌てて足を出して倒れるのは免れたけれど、顔を上げればまだちらほらと帰路につく人々の姿が見えた。


「…あれ?」


倒れないようにと足下に視線をやり、落ちている何かに気付く。どうやらハンカチのようだ。
拾い上げて裏返せばSとHの刺繍が入っていた。そういえば誰かが使っているのを見たような。
うーん、と考えてみると思い当たることがあった。白馬君のハンカチだ。刺繍も彼のイニシャルと一致する。


「どうしよ…」


明日学校で返そうか。でも今近くにいるならなるべく早く返してあげた方が良いのかもしれないし。
いつも探偵業で忙しい彼のことだから、学校だっていつ来られるか分からなくなる可能性だってある。
少しの葛藤の末に、キッドと彼との対決が終わったらすぐに渡そうとその場をあとにした。

▼23話→←▼21話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (187 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
441人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Silvia(プロフ) - 怜さん» わ!!!2年前にもコメントしてくださった方ですよね…!?本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜!!ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです! (5月14日 8時) (レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます!!!お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです( ; ; )応援しています!! (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます!!!好きって言っていただけて嬉しいです!がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この作品とっても好きです!!これからも頑張ってください! (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月22日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。