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▼15話 ページ18

「…ん、できた!」


蓋を被せてから約五分。綺麗な焼き色のハンバーグに思わず嬉々とした声を出してしまう。
普段は淡々と料理してしまうのに成功したらこうして喜んでしまうのは、きっとこの料理が彼の口にも入るからで。
後は火を止めたままにしておいて、余熱で少しの間蒸らしておいたら出来上がり。


「次はサラダとスープ、か」


ずり落ちてきた袖をきゅっと捲り上げ、あらかじめテーブルに揃えておいた野菜を水洗いする。
今日の味付けはどうしようか。ハンバーグが結構どすんと来る食べ物だから、ドレッシングはさっぱりしたものの方が良いのかも。
冷蔵庫を開けると扉の裏の収納にはお気に入りの調味料やドレッシングが仕舞われている。その中から合いそうなものを吟味して、分量にも少し気を遣いながらかけていく。
それからまた別に取り置きしておいた野菜を食べやすい大きさに切り、調味料と共にぐつぐつと煮込んだところでほっと息を吐いた。これでほぼサラダとスープは完成。

_ピンポーン、と高い聞き慣れた音が来客を告げる。
濡れている手をハンカチで拭きながらモニターを覗くと私服姿の快斗が玄関扉に視線を向けていた。
「今開けるね」通話ボタンを手の甲で押してそう言うと画面の向こうで一瞬目を丸くする彼。
急いで玄関まで向かい、鍵を開けて「おかえりなさい!」と笑顔で快斗を出迎えた。一瞬固まった後、「ただいま」と笑い返してくれる。
それからすんすんと仔犬みたいに辺りを嗅いで、


「すっげぇ美味そうな匂いすんだけど」


「でしょ?」満更でもない気分で返すと嬉しそうに口元を緩めて頷いた。
「マジで腹減ったぁ」ダイニングに直行しようとする彼の服を慌てて掴み、「手洗ってきて〜」と訴えると「わーってるって」と頭をくしゃりと撫でられた。彼の背を見送り料理を並べ終えると、いつの間にか戻ってきていた彼が私の向かいの席に座り「すげぇ」と一言。


「…なんか今、めちゃくちゃ感動してる」
「えへへ、今日は少し張り切ったからね」
「料理だけじゃねえって。エプロン着てんのだって初めて見たし、おかえりって言われんのも新鮮で、さ」


そう言ってハンバーグを口に運ぶ快斗。
「…うま」ぽろりと洩れた一言に「よかった」と胸を撫で下ろす。そんな安息も束の間で、悪戯に瞳を煌めかせた彼が一旦ナイフとフォークを下ろし、ふっと意味深に笑いながら首を傾げて。


「__もしこんなのが続いてくれるんなら、俺としては万々歳なんだけど」

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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ!!!2年前にもコメントしてくださった方ですよね…!?本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜!!ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです! (5月14日 8時) (レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます!!!お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです( ; ; )応援しています!! (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます!!!好きって言っていただけて嬉しいです!がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - この作品とっても好きです!!これからも頑張ってください! (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年3月22日 10時

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