▼9話 ページ12
「どう？美味しかったでしょ？」
「ああ。さんきゅ、連れてきてくれて」
「どういたしまして！」
手を後ろで組んだ彼女が俺を見上げ、ぱっと表情を輝かせる。ふっと微笑むと「よかった、元気になって」と一度目を瞑り、彼女が穏やかに笑って首を傾けた。
セーラーの赤いリボンが光風に撫でられてふわりと舞う。夜空に浮かぶ鮮やかな満月の光がスポットライトみたいに彼女を淡く照らした。
「眠そうだったのに無理矢理連れて行っちゃったのは悪かったけど…でも、今の快斗のほうがさっきよりもずっと幸せそう」
「…ンなひでぇ顔してたか？俺」
「んー、酷かったっていうか…少し考え込んでるなぁって感じだった」
「ハハハ…」
どうやら彼女には何でもお見通しらしい。
「んじゃあ、これならどうだ？」
勿体ぶってトランプを取り出し、そこでふと新作のマジックがあったことに気付く。
「ん〜？」
興味津々といった様子で俺の手を見ていた彼女が「わ、凄い！」と目を輝かせる。
どうやら寝る間を削って考えていた甲斐はあったらしい。御捻りは彼女の笑顔で釣りが来る程だ。
「ほんと、いつ見ても魔法使いみたい」
「魔法使い？」
「うん！…快斗は私にとって唯一の魔法使いだから」
「はあぁ？何だそれ。魔法とマジックは別だっつーの」
「もう、夢無いなぁ」
紅く染まった頬を不満気に膨らませるA。
そういや名探偵にもそんなこと言われたな、なんて考えながら「わりぃわりぃ」へらりと笑うと俺を見る彼女の視線が柔らかくなる。
「やるよ」渡したのは純白のバラ。目を丸くする彼女に「今日のお礼」と付け足してくしゃりと頭を撫でると、「ありがとう」と気持ち良さそうに目を閉じてふわりと笑う彼女。
「ね、覚えてる？」
美しい双眸がまるで虚空に思い出を描いているみたいに愛おしげに細められた。
昔話やら何やらを語るかのように、優しく、ゆっくりとした語り口で彼女の唇から言葉が紡がれる。淡紅色が綺麗だ。とても。
「あの頃はずっと快斗の後ろをついて回ってたっけ」
「…そうだな」
「今でも快斗は隣にいてくれてるけど、いつの間にかあの頃のことを思い出話にしちゃうんだから、時の流れって速いよね」
「…ッ」
懐かしむような、羨むような、そんな思いを孕んだ眼差しが吸い込まれていく。
そんな普段と違う彼女に変な胸騒ぎがし、言葉に詰まった。
「ねえ、快斗？」彼女が俺の名前を呼んで花をそっと胸に抱き込む。その顔はどこか儚げで。
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Silvia(プロフ) - 怜さん» わ！！！2年前にもコメントしてくださった方ですよね…！？本当に嬉しいです、見てくださってありがとうございます〜！！ゆっくりにはなってしまいますが、更新はし続けるつもりなのでこれからもお付き合いいただけると幸いです！ (5月14日 8時) (
レス) id: b3d15ce9d9 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - 通知きて叫びました、、更新ありがとうございます！！！お忙しいかと思いますがぜひこれからもお話書いていただけたら嬉しいです（ ; ; ）応援しています！！ (2023年5月6日 1時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Silvia(プロフ) - 怜さん» うわああぁありがとうございます！！！好きって言っていただけて嬉しいです！がんばります:) (2021年5月19日 15時) (レス) id: a80726cefa (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - この作品とっても好きです！！これからも頑張ってください！ (2021年5月19日 15時) (レス) id: abf0b4af80 (このIDを非表示/違反報告)
Frisk(プロフ) - シルビア-Silvia-さん» 振り込むって時点で金なんだよなぁ…絶対破壊光線期待してます。 (2021年1月16日 12時) (レス) id: 83e488319f (このIDを非表示/違反報告)
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