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*episode 鈍い* ページ43

「実はね__」


ドアが閉まり、Aが勢いよく出ていった後のこと。

「あーあ、Aちゃん行っちゃった」
「・・・・んだよ、あいつ」

半ば不機嫌にそう呟きながら快斗がどさりと椅子に腰掛け、訳が分からないと言うような眼差しで千影を見た。

僅かに肩を竦めた千影が「快斗ってば、鈍いんだから」と大きくため息を吐き、窓に掛かっていたカーテンを開ける。

「鈍いって?」
「Aちゃんの気持ちも少しは考えてあげなさいよって話。声も沈んでたし、相当落ち込んでたみたいだけど」

何かあったの、と不安げに呟く千影を他所に、快斗はハッと目を見開く。思い当たる節が一つ有ったからだった。

まさか名探偵の彼女とキスしようとしていたのを見られてしまったのだろうか__?部屋を出ていく際、Aの瞳から涙が溢れたのを快斗は見逃していなかった。

「もしかして・・・・」
「何、思い当たることがあるの?」
「ちょっと、な。あいつに誤解を植え付けちまったかもしれねえ」

快斗が深くため息を吐き、苛立たしげに前髪を掻きあげる。指の隙間からさらさらと髪の毛が溢れ落ちた。

「いいアイデア、思いついちゃった」
「いいアイデア?」

そうよ、と自慢げに千影が頷く。人差し指をピッと立て、妖しく笑った。

「快斗、好きでしょ?Aちゃんのこと」
「は!?べ、別に好きなんかじゃ・・・・!」
「好きなんだったら、誤解を吹き飛ばすいい方法があるわよ」

いい方法?と訊き返す。うんうんと頷く千影の方に身を乗り出し、真剣に話を聞く体勢になった。

「この状況を利用して告白するの。そんなことされたら誤解なんかひとっ飛びよ」
「で、でも・・・・」
「やっぱ恥ずかしい?それは」

顔に熱が集中する。こくりと頷いた快斗の背中を千影が摩り、ふわりと笑いかけた。

「頑張って。早くしないと、Aちゃんが取られちゃうわよ?」
「あのさあ、俺、・・・・あいつに告るから」

千景が背後で目を輝かせる中、快斗は無言で自分の上着を二枚抱えて部屋を飛び出した。

*episode 青春*→←*episode 思わせ振り*



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シルビア@快斗君神推し(プロフ) - アイリスさん» ありがとうございます!快斗君格好良すぎて…… (2018年6月2日 12時) (レス) id: 6380122d07 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - 展開が甘酸っぱい…快斗に惚れ直しました(笑)これからも応援しています! (2018年6月2日 12時) (レス) id: b4b2c4fcf3 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア@快斗君神推し(プロフ) - ピッピさん» ありがとうございます!応援に応えられるよう頑張りますね! (2018年5月29日 18時) (レス) id: 6380122d07 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ(プロフ) - 快斗ー!!めちゃくちゃカッコいいです!!10点連打機能がない占ツクを初めて恨みました…!笑 続きも応援しています(*^^*) (2018年5月29日 11時) (レス) id: d3db016fb1 (このIDを非表示/違反報告)
シルビア@快斗君神推し(プロフ) - MONOさん» ありがとうございます(^^♪ (2018年5月26日 18時) (レス) id: 6380122d07 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Silvia | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年4月23日 16時

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