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「……幸村くん……あの、さ。」
「ん?」
優しい笑みが、Aを覗き込む。
柔らかくて優しくて、どこか、綺麗すぎた。そんな笑みが。
聞いてはいけない、そんな気もした。
それでも、聞いてみたいと思った。
どうして……
「どうして、ここには幸村くんたちしかいないの?」
思い切って切り出した、疑問。幸村は、何も答えなかった。
風が吹く。潮の匂いを乗せて、風は幸村のジャージを揺らしてどこかへ消えていった。
その風は、何故かどこか、生暖かったような気がした。
「……幸村く、」
すっと、彼の人差し指が伸びる。
Aの口元に、彼の白い指が触れた。途端に、Aは口をつぐむ。
否、つぐむより他に道はなかった。幸村の指が触れた途端、言い出したかった言葉が全て出てこなくなったのだ。
Aは、幸村に黙らせられたのだ。まるで、魔法のように。
「……君が気にすることじゃあないよ水那月さん。あいつがいろいろ言ってるだけだから。」
「……」
「……知りたそうだね。……わかったよ。」
Aの口に伸びた指が、首へと回る。
するりと回った腕。触れた、冷たい感触にAは思わず肩を震わせた。
「ひっ……」
「明日、教えてあげる。」
耳元で幸村が囁く。そのまま、吐息は首元へと移り、また、小さなリップ音を立てた。
「だから、また明日ね。」
声とともに、腕の感触が離れる。そのままAは、倒れ込むように意識を失った。
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I like choco - 面白すぎます!心臓バクバクいってるんですけどどうしたらいいですか? (2020年6月28日 20時) (レス) id: 46acbe60c7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - 海底学校・・・行ってみたい(*´▽`*) (2017年6月9日 19時) (レス) id: baf811e79e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー - これ素敵です!! (2017年1月30日 0時) (レス) id: c6154ab521 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - まゆさん» ダメですよ帰れなくなっちゃいますよ!! (2015年10月17日 23時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - うー....でも仁王君ドンッってされてみたいです....w (2015年10月17日 22時) (レス) id: 8478a5faa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年9月22日 22時