五条悟の守護という縛り【呪術廻戦】

縛り ページ29

『…おい、道真、起きろ。』


誰かの声が聞こえ、肩を揺すられて道真は目を覚ます。


瞼をゆっくり開けると


『…水明？』


『そうだ、久しいな。
あれからおよそ五十年か？お前も老けたな。』


枕元にはかつての旧友の姿があった。


『…そ、それは歳を取ったから当たり前…。』


『少し、散歩でもしないか？おじいちゃん。』


二人は深夜の京都の街へ空中散歩に出かけた。



『水明、君は死んだはずじゃないか？
どうしてここに…。』


『…私の家に代々伝わる術式があってな、死者の魂を呼び戻すものだ。』


道真は何かに気づいたようで、目を見開く。


『……理解が早くて助かるよ。

殺され、そして次は無理やり生かされる。半永久的な命だ。
…いや、命なんてものではないな。』


悲しそう笑って街を見下ろす水明。


『今、この世界はどうなっている？』


『……君も容易く想像できると思うが、神覚家は衰退の一途を辿っている。
禪院家と、加茂家はそれを利用してさらにやりたい放題だ。
私が当主でいる間は中立の立場だが、これからどうなるかもわからない。』


『…やはりか。
なかなか平和な世というのは難しいな。』


二人の間に沈黙が流れる。


『道真、頼みがある。』


重い空気の中、そう切り出したのは水明だ。


懐から石を取り出す。
その表面には呪文が所狭しと書かれていた。


『この石に私の術式を刻んだ。
これを使って、私の一族を消してくれ。

存在そのものを消すか、記憶のみ消すかは術式が選ぶ。
お前はこれに呪力を流すだけでいい。』


渡された石を凝視し、次いで水明に視線を向ける。


『私には一族の問題に介入する資格はな『初めて。』


道真の言葉を遮る。


『初めてだ。自分の感情に従いたいと思ったのは。

怒りと悲しみが混ざって気が触れてしまいそうだ。』



水明の目からは涙が一粒こぼれ、強く握った拳は震えている。


『残穢も、何もかも全て、私に関するものを現世に残したくない。

…私が居るだけで、真っ当に生きる人間が死ぬのだから。』


道真に会う前に、水明は山に住んでいた家族を探した。
しかし、そこで得たものは、五十年前に殺されたという事実だけであった。


『…条件がある。

今後、私の子孫に力を貸してもいいと思えるような人物が現れたら、力添えしてほしい。』


道真は暗に未来に希望を託したのだ。
この世界を変えてくれる子が現れることを。









翌朝、京都の街は何かを失ったようだった。

希望→←誰？

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