五条悟の守護という縛り【呪術廻戦】

まだ、あの頃 ページ19

『水明様！お待ちください！当主が呼んでおられます！』

　
1人の男が少女の後を追いかけている。


『あのじじい、自分が死にそうな時になって当主という権力を振りかざしおって…。

倉島、私は行かんぞ。


あの男と私との間で大変だとは思うが、それもあと数時間の辛抱だろう。



あとそれと、次期当主は私以外の誰かにしてくれと頼め。
もちろん、お前でもいいぞ？』

　

鼻で笑ったあと、少女は家の門をくぐり抜け、外へ出て行ってしまった。



【どうせあと数時間で死ぬんだろ？】
といった裏を倉島は汲み取った。

　

この男、倉島。
第六代当主 『神覚 一』とその娘『神覚 水明』に挟まれている、この家で1番の苦労者であることに間違いない。



この神覚家は禪院家、五条家および菅原一族、加茂家と並び、呪術界で大きな勢力を保っており、
これら四つの家は睨みをきかせあいながら均衡を保っていた。

　

神覚家には【霧散昇華】という代々伝わる術式がある、
しかし、六代目はこの術式を使うことはできず、娘の水明が持って生まれてきた。

　

この【霧散昇華】という術式は対象を消し去ってしまう効果がある。人でも、記憶でも…。

そのため、保守派の人間にとって都合が悪いことを消したりすることに悪用される。

　

幼かった水明は父の、六代目当主に逆らうことができずに、無理やり力を使わせられた。



幸か不幸か、水明自身が保守派の人間に嫌悪感を抱き始めた15歳の時、当主が病に倒れた。

　

それ以来、申し分ない力を既に有していた水明は、次期当主としてほぼ全てを仕切っていた。



それと同時に、無理強いさせられていた汚い仕事を悉く断るようにした。
そのせいで、神覚家以外の家からは厄介者として白い目を向けられていた。



『私に兄弟がいればな…。

私の家は特に血縁を優先させるからいけない。』



数時間後、水明はぶつぶつと独り言を言いながら帰ってきた。


そこを待ち構えていた、大人2人が水明の両腕を取り、無理やりどこかへ連れて行く。



『な、お前達どこに連れて行くんだ！』


『水明様、当主の最後の遺言は聞かなくてはなりません！』


『誰かが聞けばいい話だろう！私は行かんと言ったぞ！』



大人の男の腕を力ずくで振り払い、当主の部屋に背を向けて廊下をドスドスと歩く。



すると、背後から


『水明様！
当主が、たった今ご逝去されました…。』



当主の側にいたであろう倉島の声が後ろから聞こえた。

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