曙天 ページ5
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「鷹宮さん、この機材情報室に運んでもらってもいいかしら」
「…分かりました」
私を使う多くの場合は先生だ。他の学級委員がどうかは知らないけれど、部活に入っていない私を良いように使いたがる。八方美人で貫いた過去の自分が間違っているとは言えないけど、先生に何かを頼まれることは少なくない。
別棟に設けられたPC室、基情報室にプロジェクター2台を戻すようお願いされてしまった。今日も往復か、なんて塾の時間を確認しながら断れない自分に溜息を吐く。
既に誰も居なくなった放課後の教室に無造作にプロジェクターが入った段ボールが2つ置かれていた。
1つを持ち上げ体勢を直す。思いの外重たいそれにまた溜息を零したところで、んしょ、と目の前から人の声が聞こえた。
「ん、これどこ持ってくん?」
あの日のように首を傾げこちらを見下ろすのは不思議なライムグリーンの瞳。聞いとる?と更に首を傾げる彼に慌てて頷くと、どこ持ってくんとまた同じ質問が繰り返される。情報室、と答えるとおっけー、と乱雑に足で教室のドアを開け廊下に出ていく背中。
適当に縛られた短いしっぽが揺れる彼の後頭部を眺めていれば、くるりと振り返った彼がはよ行こ、とその場で立ち止まり私を待つ体勢になった。
我に返り彼の隣につけば重くない?そっちも持つで、と気遣われふるふると首を横に振った。
【
夜明けの空。
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作者名:ヒスイ | 作成日時:2020年12月19日 22時