快晴を翔ける (ページ11)

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狐日和ページ11

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死ぬんだ、直感でそう思った。視線の先には青いマントを広げた空が広がっている。
身体が浮く感覚がゾワゾワと背中を駆け抜けるが、一向に身体は重力に引っ張られることなくその場に留まったまま。ぴたりと時が止まったように身体は投げ出されたまま脳だけが動いていた。

「と、トリイ、くん…これ、どうなって、」

理解しきれず脳が混乱し始めた頃、やっとの思いで言葉を発すると視界の外でくはは、と乾いた笑い声が聞こえた。
訳が分からない状況に目だけを動かして周りを確認していればふっと顔に影がかかる。私を見下ろしたトリイくんは私の腕をぐんと引っ張ると身体を起こしてくれた。そこで自分とトリイくんが空中に立っていることに気づく。

ひゅ、と細く息を吸い込むと落ち着きぃや、と彼の手が頬を撫でる。その手が冷たくて、びくりと身体を震わせた。私の頬を包むように両手で掴んだ彼はゆったり私の顔を上げさせるとにっこりと笑みを浮かべた。

「A、もし、お前が本当に今死にたいなら、少しだけ俺に身体を預けてみないかぜ？」

にやりと歯を剥き出して笑ったトリイくんに腰を抱き寄せられるとまた強い風に包まれる。
俺だけを見とって、睫毛すら触れる距離でそう囁かれた瞬間、大きな羽音と共に錆色が視界を覆った。

【狐日和(きつねびより)】
照っているかと思えば雨が降ったりするような、一定しない天気。