快晴を翔ける (ページ8)

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天際ページ8

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「そういえばトリイくんて、カラコン入れとるの？」
「……へ？」

ぱちんぱちんとホチキスの音が教室に響く中、ふと気になったことを聞いてみた。彼はきょとんとそのライムグリーンの瞳を丸くさせてぱちぱちと瞬きを繰り返す。深い山奥でひっそりと陽に照らされた草木のような鮮やかな黄緑は、やがて不思議そうに私へ視点を合わせ問う。

「A、は俺の目が何色に見えとんの？」
「？黄緑かな、鮮やかな」

私の言葉に彼はきゅ、と眉を寄せる。何かいけないことでも言っただろうか、もしかして気にしてたり、なんて事を考えていれば彼はそういえばさ、と話題を切り出す。やっぱり嫌だったのだろうか、と少し落ち込むとAって俺のこと全然知らんかったよな、と彼の手が止まる。

クラス名簿で名前を確認する程だ、一切記憶が無かった。そう言える訳もなく曖昧に頷くとなるほどなぁ？と彼は一人納得したように呟いた。

「…元々やで、どう？」
「え？えーっと、ガラス玉みたいで綺麗」
「ほーか」

嬉しそうに笑った彼は作業を再開させる。
今は答えない、という姿勢のようだった。いつか彼の事をもう少し知れたら、そんな気持ちが僅かに渦巻いた。

【天際(てんさい)】
空の際。空の果て。