陸拾壱話 ページ28
『………。』
列車での事件から10日経った。
応急処置を施され、Aの家で療養している炎柱は未だに目を覚まさない。
『(……脈も呼吸も正常。そのうち目覚めるわね。)』
あの後、炎柱・煉獄杏寿郎の危篤状態が柱達全員に伝えられた。
もちろん、お館様の耳にも入った。
そして、炎柱様の家族にも。
『(……にしても、会いに来るのが弟だけって。父親は何してるんだか。)』
甚だ呆れたA。
この10日、身内で会いに来たのは弟の千寿朗のみだった。
……言わずもがな、柱達は普通に会いに来たりしてるが。
コンコン、と戸を叩く音がした。
千寿朗「Aさん…。こんにちは。」
少しやつれた顔で立っている炎柱の弟・煉獄千寿朗。
まあ、無理もないだろう。
『……どうぞ。』
千寿朗「はい。失礼します。」
礼儀正しくて大人しい子なのに。
ちょっと気の毒だな、と思うAであった。
*
*
*
千寿朗「兄上……。」
ぎゅっ、と兄の手を握る弟・千寿朗。
今までも1人で、こうしていたのだろうか。
『……お水、持ってくるわね。』
千寿朗「いえ、お気遣いなく……。」
気まずそうにそう言う千寿朗。
『……いいから。甘える術を学んだ方がいいわよ。』
千寿朗「す、すみません…。」
Aがそう言うとぺこりと一礼した千寿朗。
うっすらと微笑み、Aは部屋を出た。
・
『……はい。』
千寿朗「すみません。ありがとうございます…。」
Aが差し出した水に遠慮がちに口をつける千寿朗。
千寿朗「……あの、Aさん。」
『ん?』
千寿朗「どうして、兄を助けてくれたんですか?」
それは、千寿朗が今1番知りたい事だった。
千寿朗「……Aさんは、その、兄が闘っていた時に、あの、えと、加勢…しなかったって聞いてるん、ですけど。」
『ええ。その通りよ。』
千寿朗「人に興味がない、とも聞きました。」
『ええ。』
千寿朗「……どうして、人に興味がないと言うのに、兄を助けてくれたんですか…?」
いろいろな隊員を通じてAに関する噂を聞いていた千寿朗。
実はこの屋敷に最初に来る時、かなり身構えていたのだ。
『………見てみたかったから、かな?』
千寿朗「え…?」
『…どういう風に彼らを成長させてくれるのか。見てみたかったからかな。』
まあ、要約すればAの気まぐれから起きた行動である。
1813人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エメラルドの飛沫(プロフ) - この夢主嫌いです。 (2021年4月21日 17時) (レス) id: fb58ba212d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - すごいアオルなー(・・;)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月3日 8時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - 零華さん» はい!またリクエストお待ちしていますね!楽しんで頂けて何よりです!(^_^) (2020年3月2日 18時) (レス) id: 62cba94915 (このIDを非表示/違反報告)
るい(プロフ) - 抹茶タピオカ2号さん» 本当ですか、よかったです( ̄∇ ̄) (2020年3月2日 18時) (レス) id: 62cba94915 (このIDを非表示/違反報告)
零華 - リクエストの方は、全然大丈夫でした。逆に、リクが通って、よかったです。これからも、更新、頑張ってください!応援しています!!。( `・∀・´)ノ ガンバレ--!。 (2020年3月2日 4時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:魅夜 | 作成日時:2020年2月24日 20時