【鬼滅の刃】蟲柱の妹は、妹だと名乗らない 弐

伍拾話 ページ17

魘夢「(…本当は幸せな夢を見せた後で悪夢を見せてやるのが好きなんだ。人間の歪んだ顔が大好物だよ。堪らないよね。不幸に打ち拉がれて苦しんで踠いてる奴を眺めてると楽しいでしょう。)」


魘夢「(だけど俺は油断しないから。回りくどくても確実に殺すよ。鬼狩りは、ね。)」


魘夢「(インクに俺の血を混ぜた切符。車掌が切符を切って"鋏痕"をつければ術が発動する。これは遠隔術だ。)」


魘夢「(面倒でもこれが1番、術だと気づかれにくかった。気づかれないのは大事な事だ。夢だと気づくまでそこは現実なのだ。)」


魘夢「(……それなのに。)」




魘夢がじっと見据えるその先には、夢から覚醒した竈門炭治郎の姿が。






魘夢「(何でコイツは起きたのかな？短時間で覚醒条件も見破った。)」


魘夢「(「幸せな夢」や「都合のいい夢」を見ていたいっていう人間の欲求は凄まじいのにな。)」





炭治郎「人の心に土足で踏み入るな。俺はお前を許さない…！！」



そう言う炭治郎の瞳は怒りに満ちている。
そこへ少し遅れてAも到着した。



魘夢「あれぇ？君、この列車に乗ってたっけ？」



この列車の中で初めて見たAに向け、下弦ノ壱の鬼・魘夢がそう問う。



『ええ、最初からいたわよ。』
魘夢「おかしいなぁ。君、眠って無かったよね？」
『あんなアホくさい、ちんけな術にかかるとでも思ってんの？だとしたら相当なバカだよね、あんたも。』
魘夢「……どこで気づいたの？」
『さあ？考えてみたら？』



ニコニコと笑みを浮かべるAだが、匂いがいつもと違う事に気づいた炭治郎。
カラ、と炭治郎の耳飾りが揺れる。




魘夢「(…あれぇ？耳に飾りを付けてるな。)」


魘夢「(運が良いなぁ。早速来たんだ俺の所に。夢みたいだ。これでもっと無惨様の血を戴ける。)」


魘夢「(そしてもっと強くなれたら、上弦の鬼に入れ替わりの血戦を申し込めるぞ。)」




ニヤァ、と魘夢が今後の身の振り方を考えているとは微塵も思わない竈門炭治郎。


炭治郎「「水の呼吸 拾ノ型 生生流転」！」
『(……水の呼吸の使い手だったのか。)』



炭治郎の刀が黒刀と知ったAは、密かに珍しい呼吸を使ってるのでは、と思っていたが期待が外れて少しガッカリした。



魘夢「「血気術 強制昏倒催眠の囁き」
……お眠りィ。」
炭治郎「…！！」



一瞬ぐらつく竈門炭治郎の身体。
しかしすぐに彼は持ち直し魘夢に向かっていく。

伍拾壱話→←番外編[夏蜜柑様リクエスト]

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す